順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学の八田耕太郎氏らは、高齢救急患者における、就寝前に不眠症治療薬「ベルソムラ(一般名:スボレキサント)」投与によって、安全にせん妄を予防できることをJournal of Clinical Psychiatry誌に発表した。研究者らは本結果について、今まで実効性がなかったせん妄の療法に、薬物療法による新たなせん妄予防の道を拓いたもので、せん妄診療を治療から予防にパラダイムシフトさせる意義があるものとしている。
ベルソムラ群はせん妄出現率が有意に低かった
研究グループは、ICUまたは一般病棟に入院する65~89歳の救急患者のうち、薬剤の経口摂取が可能で48時間以上の入院が見込まれる患者72例が対象に、ベルソムラ15mgを就寝前に1日1回3日間投与するベルソムラ群(n=36)と、プラセボを就寝前投与するプラセボ群(n=36)に封筒法で無作為に割り付け、せん妄の出現率について4日間観察した。
主な結果は下記のとおり。
・DSM-IVに基づいてせん妄の出現を評価した結果、プラセボ群では17%の患者にせん妄が出現したのに対し、ベルソムラ群でせん妄を出現した患者はなく、ベルソムラ群はせん妄出現率がプラセボ群に比べ有意に低かった(p=0.025)。
・日本語版せん妄評価尺度98年度改訂版(DRS-R-98-J)の睡眠覚醒サイクル障害(項目#1)評点の推移は、ベルソムラ群で低い傾向が観察された(p=0.053)。
(ケアネット)