うつ病や抑うつ症状は、患者の健康関連QOLや医療満足度に大きな影響を及ぼす一般的な精神疾患であるが、どの程度まん延しているかは、公表された研究間で大きく異なる。中国・中山大学のJinghui Wang氏らは、異なる臨床専門分野における外来患者のうつ病または抑うつ症状の有病率について的確な推定値を導き出すため、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。BMJ open誌2017年8月23日号の報告。
PubMed、PsycINFO、EMBASE、Cochrane Library databasesを検索し、外来患者のうつ病および抑うつ症状の有病率に関する情報を含む観察研究を抽出した。2016年1月までに公表されたすべての研究を対象とした。データは、独立した2名の研究者により抽出された。うつ病または抑うつ症状の有病率は、有効な自己報告アンケートまたは構造化面接を用いて測定した。評価は、ランダム効果モデルを用いてプールした。研究レベルの特徴の差は、メタ回帰分析により推定した。標準χ2検定およびI2統計を用いて異質性を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・83件の横断研究より4万1,344例が抽出された。
・うつ病または抑うつ症状の全体のプールされた有病率は、27.0%(1万943例、95%CI:24.0~29.0%)であり、研究間で有意な異質性が認められた(p<0.0001、T2=0.3742、I2=96.7%)。
・とくに外来患者では、一般対照群と比較し、うつ病および抑うつ症状の有病率が有意に高かった(OR:3.16、95%CI:2.66~3.76、I2=72.0%、χ2=25.33)。
・うつ病および抑うつ症状の有病率の推定値は、耳鼻咽喉科クリニックの外来患者で最も高く53.0%であった。次いで、皮膚科クリニック39.0%、神経内科クリニック35.0%であった。
・サブグループ分析では、異なる専門分野におけるうつ病および抑うつ症状の有病率は、17.0~53.0%であった。
・うつ病および抑うつ症状の有病率は、先進国の外来患者よりも開発途上国の外来患者で高かった。
・さらに、外来患者のうつ病および抑うつ症状の有病率は、1996~2010年にかけてわずかな減少が認められた。
・スクリーニング法に関しては、BDI(Beck Depression Inventory、4,702例中1,316例、36.0%、95%CI:29.0~44.0%、I2=94.8%)は、HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale、2,025例中1,003例、22.0%、95%CI:12.0~35.0%、I2=96.6%)よりもうつ病および抑うつ症状の有病率の推定値が高かった。
著者らは「研究間での異質性は、変数により完全に説明することはできなかったが、多くの外来患者は、うつ病または抑うつ症状を経験しており、臨床現場における早期発見と治療のための効果的な管理戦略を検討することが重要である」としている。
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