ブリストル マイヤーズ スクイブは、2024年12月27日にオザニモド(商品名:ゼポジア)について、「中等症から重症の潰瘍性大腸炎(既存治療で効果不十分な場合に限る)」の適応で、厚生労働省より製造販売承認を取得した。そこで潰瘍性大腸炎およびオザニモドへの理解を深めることを目的として、2025年2月25日にメディアセミナーを開催した。本セミナーでは、仲瀬 裕志氏(札幌医科大学医学部 消化器内科学講座 教授)が、潰瘍性大腸炎の概要、潰瘍性大腸炎患者を対象としたアンケート調査の結果、オザニモドの特徴や臨床成績などについて解説した。
再燃への不安が大きな負担
指定難病として認定される潰瘍性大腸炎は、若年で発症することも多く、患者数が年々増加傾向にある。難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班が2014年に実施した調査では、潰瘍性大腸炎の患者数は約22万例と推計されており、令和5年度末の特定医療費(指定難病)受給者証所持者数は14万6,702例となっている。
潰瘍性大腸炎は寛解と再燃を繰り返すことが特徴であり、仲瀬氏は「再燃があると思うだけで患者はすごく不安になり、日常生活にも大きな影響を及ぼす」と述べる。そこで、30代以上の潰瘍性大腸炎患者106例を対象に、インターネットによるアンケート調査が実施された。本調査の対象患者は、罹病期間5年以上の割合が71%、中等症から重症の割合が63%であった。再燃に関して、再燃経験を有する患者の割合は71%であり、再燃に対する不安を有する患者の割合は89%にのぼった。これについて、仲瀬氏は「さまざまな治療薬が使用可能となった時代においても、患者の89%が再燃の不安を感じているというのは、非常に重要なデータである。こうした不安を取り除くために、医療者は治療に取り組む必要がある」と述べた。
S1P受容体調節薬オザニモドの登場
仲瀬氏は「潰瘍性大腸炎はヘテロな疾患である」と述べる。つまり、潰瘍性大腸炎の病態にはさまざまなサイトカインが関与するため、個々の患者で炎症のパターンが異なり、治療への反応も異なる。そのため、さまざまな作用機序の治療薬が開発されているが、それでも治療効果が不十分な患者が存在するのが現状であり、アンメットメディカルニーズが存在するといえる。
そこで新たに登場したのがオザニモドである。オザニモドは、S1P(スフィンゴシン-1-リン酸)受容体を調節するという新しい作用機序を有する
※。オザニモドの特徴は、リンパ球上に発現するS1P
1受容体に結合し、内在化および分解を誘導することにより、リンパ球がリンパ節から循環血中へ移動するのを抑制することで、結果的に大腸内の炎症を抑制するという点にある。また、1日1回投与の経口薬であることから、患者の負担を軽減することも期待される。
※同様の作用機序を有する薬剤として、多発性硬化症治療薬のシポニモドが存在する
日本人患者198例を対象とした臨床試験で有用性を検証
オザニモドは、欧米では中等症から重症の潰瘍性大腸炎を適応として2021年に承認を取得しているが、本邦では未承認であった。そこで、日本人の中等症から重症の潰瘍性大腸炎患者198例を対象とした国内第II/III相試験「J-True North試験」が実施された。
本試験の主要評価項目である投与12週時の完全Mayoスコアに基づく臨床的改善率は、プラセボ群が32.3%であったのに対し、オザニモド0.92mg群は61.5%であり、オザニモド0.92mg群が有意に改善し(p=0.0006)、プラセボ群に対する優越性が検証された。オザニモド0.92mg群の完全Mayoスコアに基づく臨床的改善率は長期にわたって維持され、投与52週時ではプラセボ群16.9%、オザニモド0.92mg群49.2%であった(名目上のp値=0.0001)。
副次評価項目の臨床的寛解率、内視鏡的改善率、粘膜治癒率もオザニモド0.92mg群がプラセボ群と比べて改善する傾向にあり、いずれの項目も投与52週時のほうが投与12週時よりも良好な傾向にあった。
安全性について、投与52週時までの副作用発現割合は、プラセボ群が13.8%、オザニモド0.46mg群が20.6%、オザニモド0.92mg群が32.3%であった。オザニモド0.92mg群の主な副作用は、ALT増加(4.6%)、γ-GTP増加、AST増加、肝機能検査値上昇、肝機能異常、帯状疱疹、回転性めまい(各3.1%)であった。また、オザニモド0.92mg群の投与中止に至った副作用は4例に発現した(ALT増加・AST増加2例、薬剤性肝障害1例、黄斑浮腫1例)。死亡に至った副作用は報告されなかった。副作用報告数としては少ないが、帯状疱疹をはじめとする感染症や黄斑浮腫には注意を払う必要がある。
また、オザニモドの特徴としてリンパ球数の減少がある。これについて、仲瀬氏は「減少が大きければ休薬を考えないといけないが、リンパ球数の減少と治療効果は相関するという側面もあるため、リンパ球数の絶対値をフォローしながら、上手に使っていく必要がある」と述べた。
<J-True North試験の概要>
・対象:経口5-アミノサリチル酸製剤またはステロイドの投与歴がある中等症から重症の活動性潰瘍性大腸炎患者198例
・方法:プラセボ群、オザニモド0.46mg群、オザニモド0.92mg群に1:1:1の割合で無作為に割り付け、オザニモド0.92mg群には1~4日目は0.23mg、5~7日目は0.46mg、以降は0.92mgを1日1回12週まで経口投与。12週時点のレスポンダーは維持期に移行し、導入期と同じ治験薬を52週まで1日1回経口投与
・評価項目
[主要評価項目]投与12週時の完全Mayoスコアに基づく臨床的改善率(完全Mayoスコアがベースラインから3ポイント以上かつ30%以上低下、かつ直腸出血サブスコアがベースラインから1ポイント以上低下または絶対値が1ポイント以下)
[副次評価項目]投与12週、52週時の臨床的寛解率(直腸出血サブスコアが0ポイントで、排便回数サブスコアが1ポイント以下で[かつ排便回数サブスコアがベースラインから1ポイント以上低下]、かつ内視鏡所見サブスコアが1ポイント以下)、内視鏡的改善率、粘膜治癒率など
<製品概要>
販売名:ゼポジアカプセルスターターパック、ゼポジアカプセル0.92mg
一般名:オザニモド塩酸塩
製造販売承認取得日:2024年12月27日
効能又は効果:中等症から重症の潰瘍性大腸炎(既存治療で効果不十分な場合に限る)
用法及び用量:通常、成人にはオザニモドとして1~4日目は0.23mg、5~7日目は0.46mg、8日目以降は0.92mgを1日1回経口投与する。
製造販売元:ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社
(ケアネット 佐藤 亮)