末期網膜色素変性症患者を対象にして行った、人工網膜Alpha AMS(Retina Implant AG社、ドイツ)に対する研究者主導臨床試験の成績が、英国・オックスフォード大学のThomas L. Edwards氏らにより初めて報告された。6例中5例で視機能が改善し、最長24ヵ月まで持続していることが認められた。好成績が示された要因について著者は、「埋植手術はなおチャレンジングなものだが、光干渉断層撮影(OCT)ガイダンスのような新しい技術の開発により、手術手技を改良することができた」と述べている。Ophthalmology誌オンライン版2017年10月27日号掲載の報告。
研究グループは、無光覚の末期網膜色素変性症患者6例を対象に、Alpha AMSをより悪いほうの眼に埋植し、埋植眼のAlpha AMSシステムオフ時の残存視覚をオン時の視覚機能と比較する研究者主導臨床試験を行った。適格基準は、12歳以上で、重大な眼または全身の合併症がなく、過去に正常な視力を有していた者とした。
埋植の1、2、3、6、9および12ヵ月後に、物体認識試験、歩行性自己評価質問票、Basic Light and Motion(光の明滅、視標の位置および動きなどの認識に関するテスト)、縞視力テスト、グレースケールコントラスト識別テストから成る視力評価を行った。全視野刺激試験(FST)も行われた。
主要評価項目は、日常生活動作、認識タスクおよび光覚評価の改善であった。
主な結果は以下のとおり。
・6例全例で埋植が成功した。
・全例において、システムオンにより光覚と時間分解能が得られた。
・1例(症例No.4)以外の5例において、システムオンで光の局在化が認められた。
・症例No.4は、手術時の医原性インプラント損傷および不正確な埋植が組み合わさり、チップが最適に機能していなかった。
・5例でシステムオンにより縞視力が回復し、1回で0.1~3.33サイクル/度(視角1度に含まれる格子のサイクル数)の範囲であった。
・システムオフ時には見えないテーブル上の高コントラストの物体を見つける能力は、1例(症例No.4)を除く全例で、システムオン時に部分的に回復した。
・有害事象として、結膜びらん2例および下耳側黄斑網膜剥離1例を認めたが、いずれも回復した。また、埋植術中の不注意な損傷が2例生じた(症例No.3、4)。
(ケアネット)