グラクソ・スミスクライン株式会社は、2017年11月28日、都内において「女性のライフコース選択に影響を及ぼす難病 全身性エリテマトーデス(SLE)治療における生物学的製剤への期待」をテーマにメディアセミナーを開催した。
セミナーは、同社から発売予定のベリムマブ(商品名:ベンリスタ)が、9月27日に製造販売の承認を取得したことを機に開催されたものである(薬価収載は11月22日)。セミナーでは、全身性エリテマトーデス(以下「SLE」と略す)の最新知見の講演のほか、同薬剤の説明も行われた。
諸刃の剣のステロイド治療
はじめに竹内 勤氏(慶應義塾大学医学部 リウマチ膠原病内科 教授)が、「全身性エリテマトーデス(SLE)」をテーマに講演を行った。
SLEは、膠原病の原型で自己免疫病、結合組織病、リウマチ病の3要素が交差する難病であり、特徴的な症状として白血球減少、低補体血症、蛋白尿を呈する。推定患者数は6万人とされ、男女比では1:8と女性に多く発症する。
その多くは孤発性で、地域差はないが遺伝的要素は否定できないという。発症機序としては、ウイルス感染、紫外線、薬剤などの環境要因とHLAなどの遺伝要因の作用が考えられ、そのためにトレランス破綻、アポトーシス欠陥などが起こり、自己抗体の生成、免疫複合体、サイトカインの発生などが誘発されると考えられている。
診断では、次の臨床症状と抗体検査により確定診断される。SLEでは多彩な臨床症状を示し、発熱、関節炎、頬部紅斑(蝶形紅斑)、日光過敏、レイノー現象、腎障害などが現れる。とくに腎症状は50%近くで発生する。増悪と寛解を繰り返すSLEでは、ステロイド治療も相まって他の臓器ダメージを蓄積するために、臓器障害への対応が重要だという。
SLEの予後向上のポイントとしては、1)疾患活動性の速やかなコントロール、2)感染症、血管合併症対策、3)ステロイドの副作用を最小限にすることが求められ、治療でのステロイド減量をいかに行うかが課題だと指摘する。
ステロイド減量ができ、再燃させないことへの期待
SLEの治療は、重症度に応じてプレドニゾロンによるステロイド療法が行われ、現在では大量に短い期間で投与する傾向にある。また、ステロイド単独での寛解導入も減少し、最近では免疫抑制薬との併用が増加しているという。
こうした治療環境の中で登場した生物学的製剤ベリムマブは、Bリンパ球刺激因子(BLyS)を標的とし、B細胞の生存の延長や増殖の補助刺激および抗原提示機能などを抑制する作用により、SLEの疾患活動性を低下させる治療薬である。
最後に竹内氏は、「こうした治療薬が登場することで、重症病態に有効で、活動性残存症例を寛解に導き、その状況を維持できる(再燃しない)効果があり、長期的なQOL改善が達成されることを期待したい。また、今後は転帰を指標とした評価も必要になる」と展望を語り、レクチャーを終えた。
SLEの症状コントロールを容易に
続いて、ベリムマブの特徴について、同社の杉浦 亙氏(メディカル・アフェアーズ部門)が次のように説明を行った。
ベリムマブは、BLySに結合することで自己抗体の産生を抑え、SLEの疾患活動性を低下させる効果をもたらす。対象はSLEの既存治療で効果不十分な患者で、点滴製剤と皮下注製剤を提供するとしている。海外では2017年6月時点で、点滴製剤は70ヵ国以上で承認されている。
第III相国際共同試験(BLISS-NEA試験)は、疾患活動性を有するSLE患者707例をベリムマブ併用群とプラセボ併用群にランダム化し、SRI4(SLE Responder Index4)レスポンダー率、再燃率、ステロイド累積投与量、疲労感を最終評価として52週にわたり行われた。
SRI4レスポンダー率について、ベリムマブ併用群はプラセボ併用群に比べ約13%高く(p=0.0001)、再燃率ではベリムマブ併用群がプラセボ併用群に比べ約12%低下していた(p=0.0003)。また、ステロイドの累積投与量もプラセボ併用群4,758.13mgに対しベリムマブ併用群は4,190.00mgと有意に減少し(p=0.0005)、疲労感(FACIT-Fatigueスコア)の平均変化量はプラセボ併用群2.07に対しベリムマブ併用群4.77と有意に改善されていた(p<0.0003)。
また、安全性では、有害事象発現数に両群で差はなかった。
(ケアネット 稲川 進)