喫煙量、喫煙期間、禁煙期間などの喫煙習慣、年齢、性別をスコア化し、肺がん発症の10年間の累積確率を評価する予測モデルが開発され、喫煙量による用量依存的な影響が確認された。国立がん研究センターのHadrien Charvat氏らは、日本の多目的コホート研究のデータを用いて、喫煙者における肺がん発症リスクの予測モデルを構築した。著者は、「このモデルを活用することで、リスクの高い人に禁煙を促し、監視を強化することができる」とまとめている。Cancer science誌オンライン版2018年1月18日掲載の報告。
著者らは、JPHC研究コホートII(5万9,161例)のデータを用いて、パラメトリック生存モデルにより、年齢、性別、喫煙関連因子(pack-years、喫煙開始年齢、禁煙期間から計算した累積喫煙強度)の影響を評価。他の原因による死亡の競合リスクを考慮したうえで、肺がん発症の10年間の累積確率を計算した。なお、JPHC研究コホートIの4万7,501例のデータを用いて、モデルの妥当性を外部データにより検証した。
主な結果は以下の通り。
・98万6,408人年のフォローアップ期間中、全体で1,210例が肺がんを発症した。
・肺がん発症の10年間の累積確率は、男性で0.04~11.14%、女性で0.07~6.55%の範囲であった。
・現在も喫煙している場合、累積タバコ喫煙量が15pack-years未満(pack-years=1日の喫煙箱数[1箱20本として計算]×喫煙年数。15pack-yearsの例:1日1箱×15年)の場合はハザード比3.78(2.00~7.16)、75pack-years以上では15.80(9.67~25.79)に及んだ。
・肺がん発症リスクは禁煙期間の長さとともに減少した。
・本モデルは、識別能(交差検証されたC-index=0.793)および較正(交差検証されたχ2=6.60、p=0.58)において、良好な予測性能を示した。
・また、外部集団(C-index=0.772)との検証においても、識別能は良好であった。
(ケアネット 遊佐 なつみ)