心房細動(AF)とがんリスクとの関連について、前向きコホート研究を含むいくつかの研究で示唆されているが、関連の大きさと時間性は不明である。今回、イスラエル・Lady Davis Carmel Medical CenterのWalid Saliba氏らが2つの大規模研究のデータを用いて検討した結果、AF直後の90日間ではがんリスクは増加したが、90日を超えると新規がん診断のオッズが低下した。この研究結果から、先行研究でみられた関連が、因果関係よりもむしろがんの診断や検出バイアスの関連による可能性が示唆された。PLoS One誌2018年1月11日号に掲載。
著者らは、集団ベースでの2つの大規模前向き症例対照研究、すなわちMolecular Epidemiology of Colorectal Cancer(MECC、n=8,383)とBreast Cancer in Northern Israel Study(BCINIS、n=11,608)のデータを用いて、がん診断とその前後におけるAFイベントとの潜在的関連性の特徴と時間性を検討した。がんの危険因子としてAFを評価するために症例対照研究を用い、AFの危険因子としてがん発症を評価するためにコホート研究を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・症例対照研究において、AFによりがんのオッズが有意に低下した(調整OR:0.77、95%CI:0.65~0.91)。一方、コホート研究において、がんはAFリスク上昇の間に有意な関連はみられなかった(調整HR:1.10、95%CI:0.98~1.23)。
・AFイベント直後の期間(90日)はがんリスクが1.85倍増加し、がん診断直後の期間はAFリスクが3.4倍増加していた。これらの結果は、新規のがん診断に関連した急性で一過性のコンディションの影響と検出バイアスを反映していると考えられる。
・大腸がんと乳がん症例において、同様の結果が確認された。
なお、著者らは「本研究には、関連を歪めるサンプリングの偏りと残存交絡が存在する可能性がある」としている。
(ケアネット 金沢 浩子)