米国ではヒス束ペーシングを行う施設が徐々に増えてきている。今回は、右室ペーシングと比較してヒス束ペーシングが有効であることを示す最新の論文を紹介したい。
右心室ペーシングは心不全と死亡率の増加につながりやすい。一方、ヒス束ペーシングは生理的であり、右心室ペーシングの代替となりうる。Mohamed Abdelrahman氏ら米国のグループによる本研究は、ヒス束ペーシングの臨床転帰を右心室ペーシングと比較することを目的として行われた。Journal of American College of Cardiology誌2018年3月号に掲載。
ヒス束ペーシングと右心室ペーシングを前向きに比較
本研究では、2013年10月~16年12月までの期間にペースメーカーの植込みを必要とするすべての患者が研究対象となった。永久ヒス束ペーシングの植込みを連続的に1つの病院で実施し、別の関連病院で右心室ペーシングが試みられた。主要評価項目は、複合エンドポイント(植込み時の特徴、全死亡、心不全による入院、両心室ペーシングへのアップグレード)とした。
ヒス束ペーシングは92%で成功し、右心室ペーシングに比べて予後を改善
連続した患者332例のうち、304例(92%)でヒス束ペーシングが成功し、433例の患者に右心室ペーシングが植え込まれた。主要評価項目については、右心室ペーシング群に比べて、ヒス束ペーシング群で有意に減少していた(ヒス束ペーシング群:83/332例[25%]、右心室ペーシング群:137/433例[32%]、ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.534~0.944、p=0.02)。この違いは、主に心室ペーシングが20%以上必要な患者によるものであった(ヒス束ペーシング群:25% vs.右心室ペーシング群:36%、HR:0.65、95%CI:0.456~0.927、p=0.02)。 心不全による入院は、ヒス束ペーシング群で有意に減少していた(ヒス束ペーシング群:12.4% vs.右心室ペーシング群:17.6%、HR:0.63、95% CI:0.430~0.931、p=0.02)。ヒス束ペーシング群では死亡率の低下の傾向も認められた(ヒス束ペーシング群:17.2% vs.右心室ペーシング群:21.4%、p=0.06)。
本研究では、ヒス束ペーシングは、右心室ペーシングに比べて、死亡、心不全による入院、両心室ペーシングへのアップグレードを有意に減少させた。永久ヒス束ペーシングは、大規模なリアルワールドの患者において可能な手段であったと言える。
これまでの報告においても、ヒス束ペーシングを使用したペースメーカーの植込みの成功率は高く、今後は右室ペーシングに代わり、ヒス束ペーシングが増えていくことが予想される。
(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)
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