長い間、心房細動患者の血栓塞栓症予防にはビタミンK拮抗薬が使用されてきた。直接経口抗凝固薬(DOAC)が、ビタミンK拮抗薬に有効性および安全性で劣らないことからDOACの使用が増えてきているが、DOACとビタミンK拮抗薬のどちらがより心筋梗塞の予防に有効かについてのエビデンスは一致しておらず、結論が出ていない。この研究はアピキサバン、ダビガトラン、リバーロキサバンそしてビタミンK拮抗薬を服用中の心房細動患者における、心筋梗塞リスクを調べることを目的に実施された。Journal of American College of Cardiology誌2018年7月3日号掲載の、デンマークのグループが発表した後ろ向き観察研究の結果より。
デンマークのレジストリより3万1,739例の心房細動患者を抽出
心房細動の患者はデンマークヘルスケアレジストリを用いて同定され、最初に処方された抗凝固薬によって層別化された。標準化された1年間の絶対リスクとして、心筋梗塞による入院と死亡に対するハザード比がCox回帰分析を用いて求められた。経口抗凝固薬に対する絶対リスクは別々に報告され、患者の特徴に応じて標準化された。2013~16年の間に心房細動と診断され、抗凝固薬未使用の患者3万4,755例のうち、弁膜症による心房細動患者、30歳未満もしくは100歳を超える患者、および慢性腎不全の患者が除かれた。
DOACはビタミンK拮抗薬よりも心筋梗塞リスクが低い
試験に組み入れられた3万1,739例(平均年齢:74歳、47%が女性)のうち、標準化された1年間の心筋梗塞リスクは、ビタミンK拮抗薬1.6%(95%信頼区間[CI]:1.3~1.8)、アピキサバン1.2%(95%CI:0.9~1.4)、ダビガトラン1.2%(95%CI:1.0~1.5)、そしてリバーロキサバン1.1%(95%CI:0.8~1.3)であった。DOACの種類で標準化された1年間の心筋梗塞リスクに有意な差は認められなかった〔ダビガトラン vs.アピキサバン(0.04%、95%CI:-0.3~0.4%)、リバーロキサバンvs.アピキサバン(0.1%、95%CI:-0.4~0.3%)、リバーロキサバン vs.ダビガトラン(-0.1%、95%CI:-0.5~0.2)〕。DOACとビタミンK拮抗薬の間ではいずれも有意な差が認められた〔ビタミンK拮抗薬 vs.アピキサバン-0.4% (95%CI:-0.7~-0.1)、 vs.ダビガトラン-0.4% (95%CI:-0.7~-0.03)、vs.リバーロキサバン-0.5% (95%CI:-0.8~-0.2)〕。
筆者らはDOACの種類では心筋梗塞リスクに違いはみられなかったが、ビタミンK拮抗薬と比べると、どのDOACも心筋梗塞のリスクが低かったと結論付けている。しかしながら、後ろ向き観察研究のため、なぜ医師がDOACでなくビタミンK拮抗薬を選んだかなどはわからず、交絡因子が隠されている可能性もあり、さらなる研究が必要と考えられる。
(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)
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