2018年9月14日、小野薬品工業とブリストル・マイヤーズスクイブが行ったプレスセミナーで、アスベスト疾患研究・研修センター所長の岸本 卓巳氏が「胸膜中皮腫の病態・疫学・診断・治療変遷」と題して講演した。
増加している中皮腫
中皮腫は中皮細胞由来または中皮細胞への分化を示す腫瘍で、胸膜、腹膜、心膜、精巣鞘膜に発生する。日本における中皮腫の発生および死亡者数は増加傾向である。2016年の中皮腫死亡者は1,550人であり、集計データの存在する1995年からみると、その数は3倍となっている。これは、戦後の経済成長期のアスベストの輸入の増加と相関しており、アスベスト曝露から40~50年経過して中皮腫死亡者数が増加したと考えられる。今後の傾向として、職業曝露による中皮腫は減少してくものの、アスベスト自体は存在しており、ビル解体などによる低濃度曝露は今後も続くため、患者数は減少しないのではないか、と岸本氏は述べる。
予後不良な胸膜中皮腫、その治療がニボルマブで進化
胸膜中皮腫の予後は不良で、無治療だと生存期間(OS)は4ヵ月程度である。胸膜中皮腫の薬物治療は、80年代のアドリアマイシン・シクロホスファミド併用、90年代のシスプラチンと変遷してきたが、いずれも芳しい成績は示していない。2003年にシスプラチン・ペメトレキセド併用が登場し、OS中央値は、それ以前の9ヵ月から、12ヵ月程度に改善する。しかし、その差は3ヵ月であり、さらにシスプラチン・ペメトレキセドで進行した後の有効な治療手段が存在しなかった。
胸膜中皮腫の治療がニボルマブで進化?
そのようななか、胸膜中皮腫の2次治療でニボルマブの有効性が示された。国内第II相ONO-4538-41試験では、ペメトレキセド・プラチナ併用治療で進行した2次治療以降の悪性中皮腫に、ニボルマブ240mg/日単剤を2週ごと投与し、安全性と有効性を評価した。
結果、部分奏効(PR)は34例中10例(29.4%)に認められた。病型別にみると、上皮型のみならず、シスプラチン・ペメトレキセド併用が無効な肉腫型、二相型(上皮型と肉腫型が混在するもの)でも効果がみられている。OSはまだ中央値に達しておらず、無増悪生存期間(PFS)も6.1ヵ月と従来と比べ良好である。「今までの治験では、ほとんどが良くても不変(SD)。PRが10例も出ることは画期的」と岸本氏は言う。今後、シスプラチン・ペメトレキセドへの上乗せ効果、また、術前・術後補助療法への応用、CTLA-4など他の免疫治療薬との併用など、難渋してきた胸膜中皮腫治療に対し、ニボルマブのエビデンス創出が待たれる。
中皮腫が抱える問題
中皮腫が抱える問題として、確定診断や病型鑑別といった診断の難しさがある。そのためか、現在でも10数%程度の誤診が報告されているという。それらの問題の解決策として、今後は、臨床医と病理医のスキルアップ、病理医の増員が重要な要素になりそうである。
(ケアネット 細田 雅之)