研修医にとって、うつ病は重大な問題となりうる。うつ病の早期発見と適切なケアを提供することは、臨床研修中の健康状態を維持するために必要である。筑波大学附属病院 総合診療グループの伊藤 慎氏らは、ストレス対処能力の指標であるSense of Coherence(SOC:首尾一貫感覚)が、臨床研修開始2年後のうつ病を予測する因子であるかを調査するため、全国縦断研究を実施した。Journal of Clinical Medicine Research誌2018年9月号の報告。
臨床研修開始直前に、臨床研修病院251件の研修医に自己報告アンケートを配布した。アンケートには、うつ病スクリーニングツールであるCES-D(うつ病自己評価尺度)、SOC、人口統計的要因が含まれた。事前調査の回答者に対し、2年後にアンケートを配布した。フォローアップ調査には、CES-Dおよび労働状態に関する質問が含まれた。SOCスコアに基づき回答者を3群(低、中、高)に分類し、フォローアップ調査にて各SOC群とうつ症状との関連を分析した。
主な結果は以下のとおり。
・事前調査に対し、2,935人中1,738人(59.2%)が回答を行った。
・このうち、1,169人(67.3%)がフォローアップ調査に回答した。
・事前調査において、うつ症状が陽性となった169人は除外された。
・フォローアップ調査では、新規うつ病発症者数は187人(19.5%)であった。各群における割合は、低SOC群33.3%、中SOC群18.2%、高SOC群11.4%であった(p<0.01)。
・高SOC群と比較し、低SOC群におけるうつ症状の新規発症のオッズ比は、2.04(95%CI:1.02~4.05)であった(人口統計的要因、ベースライン時のCES-Dスコア、平均就労時間で調整後)。
著者らは「臨床研修2年後における研修医のうつ症状は、SOCスコアと有意な関連が認められた。低SOC群は、高SOC群と比較し、将来のうつ症状リスクが2倍高かった。SOCスケールは、将来のうつ病を予測するうえで有用であり、研修医に対する適切な支援提供を可能とする」としている。
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