統合失調症患者に対するアリピプラゾール持効性注射剤切り替え~ドイツにおけるコスト比較

提供元:ケアネット

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公開日:2018/12/20

 

 ドイツ・Institute of Empirical Health EconomicsのChristoph Potempa氏らは、統合失調症治療において経口抗精神病薬からアリピプラゾール持効性注射剤へ切り替えることによるコスト推進要因を調査し、ドイツのヘルスケア環境における予算影響分析(BIA)を行った。Health Economics Review誌2018年11月23日号の報告。

 単一レトロスペクティブ非介入前後比較研究として実施された。統合失調症患者132例を対象に、経口抗精神病薬治療およびアリピプラゾール持効性注射剤治療における精神科入院率と関連費用の比較を行った。両治療期間におけるヘルスケア関連費用を比較するため、BIAを用いた。結果のロバスト性を評価するため、単変量感度分析を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・アリピプラゾール持効性注射剤への切り替えは、経口抗精神病薬治療と比較し、6ヵ月の治療期間における精神科入院率を有意に減少させた(14% vs.55.1%、p<0.001)。
・患者は、18.2%が就労者で、29.2%が就労不能であった。
・患者1人当たりの統合失調症エピソード数は、アリピプラゾール持効性注射剤治療群は0.41エピソードであり、経口抗精神病薬治療群の2.58エピソードと比較し、有意に少なかった(p<0.001)。
・アリピプラゾール持効性注射剤治療群は、経口抗精神病薬治療群と比較し、患者1人当たりの平均入院回数(0.16回 vs.0.63回、p<0.001)および入院日数(5.56日 vs.27.39日、p<0.001)を有意に減少させた。
・さらに、診療所および精神科救急における平均滞在時間に、有意な減少が認められた(7.29日 vs.46.13日、p<0.01)。
・1年間の観察期間中における統合失調症患者1人当たりのコストは、経口抗精神病薬治療群で9935.38ユーロ(直接費用:9498.36ユーロ)、アリピプラゾール持効性注射剤治療群で4557.56ユーロ(直接費用:4449.83ユーロ)であった。
・ドイツのヘルスケアシステムの観点からみると、総コストは、経口抗精神病薬治療で65億1,760万6,265.43ユーロ、アリピプラゾール持効性注射剤治療で29億8,975万6,603.05ユーロであった。
・この結果は、感度分析においてもロバスト性が示され、アリピプラゾール持効性注射剤治療は費用対効果の高い治療戦略であることが示唆された。

 著者らは「本結果は、統合失調症患者に対するアリピプラゾール持効性注射剤治療は、ドイツの法定健康保険におけるコスト削減のための大きな可能性を秘めていることを示唆している」としている。

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