認知症は世界的に重要な問題となっており、そのコストは、2015年で8,180億USドルと推定されている。そして、世界で最も高齢化の進む日本において、この問題は重要である。しかし、日本における認知症の社会的コストは、あまりよくわかっていない。慶應義塾大学の佐渡 充洋氏らは、社会的視点から認知症のコストを算出するため、検討を行った。PLOS ONE誌2018年11月12日号の報告。
有病率に基づくアプローチを用いて社会的視点からコストの推定を行った。コストを推定するためのパラメータの主なデータソースは、全国データベース、医療の利用には全国の代表的な個人レベルのデータベース、介護給付費等実態調査、長期の公的な介護の利用には個人レベルの2次データに基づく全国調査、非公式の介護の費用には同介護時間の調査結果であった。得られたパラメータより認知症コストを推定するために、確率論的モデリングを用いて分析を行った。また、将来のコスト予測も行った。
主な結果は以下のとおり。
・2014年の日本における認知症の社会的コストは、14兆5,000億円(標準誤差[SE]:660億円)と推定された。
・この内訳は、医療費1兆9,100億円(SE:49億1,000万円)、介護費6兆4,400億円(SE:632億円)、非公式の介護の費用6兆1,600億円(SE:125億円)であった。
・認知症患者1人当たりの費用は、595万円(SE:2万7,000円)であった。
・総費用は、2060年に24兆3,000億円に達し、2014年の1.6倍になると推定された。
著者らは「日本における認知症の社会的コストは非常に高く、この影響を緩和するための介入が必要とされる」としている。
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