九州大学の畑部 暢三氏らは、中年期から高齢期の握力低下と認知症リスクについて、検討を行った。Journal of Epidemiology誌オンライン版2018年12月8日号の報告。
60~79歳の認知症でない地域住民1,055例(平均年齢:68歳)を対象に24年間の追跡調査を行った。そのうち835例(平均年齢53歳)は、1973~74年に実施した健康診断のデータを中年期の分析に使用した。中年期から高齢期の15年間(1973~1988年)にわたる握力低下によってもたらされる認知症、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症(VaD)のリスクをCox比例ハザードモデルで推定し、1988~2012年までフォローアップを行った。
主な結果は以下のとおり。
・フォローアップ期間中に368例が認知症を発症した。
・握力低下が大きくなると認知症発症率が有意に増加した(年齢、性別で調整)。
●握力の上昇または変化なし(0%以上):25.1/1,000人年
●握力のわずかな低下(-14~-1%):28.4/1,000人年
●握力の著しい低下(-15%以下):38.9/1,000人年
・潜在的な交絡因子で調整した後、握力の著しい低下は、認知症リスクの上昇と有意な関連が認められた。握力の著しい低下が認められた人は、握力が上昇または変化しなかった人と比較し、認知症リスクが1.51倍(95%信頼区間:1.14~1.99、p<0.01)高かった。
・ADでは同様な所見が認められたが、VaDでは認められなかった。
著者らは「中年期から高齢期の著しい握力低下は、高齢期の認知症発症の重要な指標であることを示唆している」としている。
■関連記事
日本のアルツハイマー病、30年の推移:九州大
「歯は大切に」認知症発症にも影響:久山町研究
男女における握力とうつ病との関連
(鷹野 敦夫)