スタチン使用が前立腺がんの転帰改善に関連することを示す複数の疫学的研究が報告されている。スタチンの効果を確認するための大規模臨床試験を実施する前に、最も適切な対象患者とスタチンの種類を特定することが必要である。今回、台北医学大学のSzu-Yuan Wu氏らは、後ろ向きコホート研究により「アンドロゲン除去療法を受けている進行前立腺がん患者の生存率改善に、アトルバスタチン、プラバスタチンおよびロスバスタチンが関連することが示唆される」と報告した。European Journal of Cancer誌オンライン版2019年2月28日号に掲載。
本研究は、2008~14年の台湾がん登録を用いた後ろ向きコホート研究で、対象は、がん診断後1年目にアンドロゲン除去療法のみを受けた局所進行および転移を有する前立腺がん患者5,749例。スタチンを28日間以上処方された場合にスタチン使用者と定義した。逆確率重み付けCoxモデルを用いて、全死因死亡および前立腺がんによる死亡(PCSM)におけるスタチン使用の影響を推定した。
主な結果は以下のとおり。
・全体で2,259例が死亡し、うち1,495例は診断後1年から追跡調査期間中央値3.6年の間に前立腺がんで死亡した。
・スタチン使用は、全死因死亡率(ハザード比[HR]:0.78、95%信頼区間[CI]:0.70~0.86)、転移例におけるPCSM(HR:0.76、95%CI:0.68~0.86)、局所進行例における全死因死亡率(HR:0.66、95%CI:0.54~0.81)の有意な低下と関連していた。
・アトルバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、もしくはピタバスタチンを投与された患者は、他のスタチンを投与された患者より死亡率の大幅な減少を示した。
・スタチンの有益性は、診断後にスタチンを投与された男性で一貫して観察され、合併症の多い人や高齢者でも認められた。
(ケアネット 金沢 浩子)