ゾルピデムとベンゾジアゼピン、抗うつ薬、オピオイド鎮痛薬との併用が、ゾルピデム単独投与と比較して、自殺リスクを増加または自殺を誘導するかについて、韓国・成均館大学校のHi Gin Sung氏らが検討を行った。Social Psychiatry and Psychiatric Epidemiology誌オンライン版2019年4月29日号の報告。
韓国国民健康保険サービス-全国サンプルコホートデータベースを用いて、ケースコントロール研究およびケースクロスオーバー研究を行った。対象は、2004~13年の間に自殺歴を有する20歳以上の症例(ICD-10:X60~X84[故意の自傷および自殺]とY87.0[故意の自傷の続発・後遺症]の国際統計分類の自傷行為)。ケースコントロール研究では、対照群10例について年齢、性別、インデックス年、地域、所得、健康保険の種類で各ケースをマッチさせた。ケースクロスオーバー研究では、ハザード期間を60日と設定し、同じ長さの対照期間の対応するセッション5つに割り当てた。自殺前60日間のゾルピデムとベンゾジアゼピン、抗うつ薬、オピオイド鎮痛薬との併用およびゾルピデム単独投与について評価した。オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を推定するため、条件付きロジスティック回帰分析を行った。
主な結果は以下のとおり。
・ケースコントロール研究では、ゾルピデムとベンゾジアゼピンや抗うつ薬を併用した場合、ゾルピデム単独投与と比較し、自殺リスクが2.80倍高かった(調整OR:2.80、95%CI:1.38~5.70)。
・しかし、ケースクロスオーバー研究では、自殺リスクに有意な差は認められず(粗OR:0.92、95%CI:0.55~1.52)、統計学的に検出力不足であった。
著者らは「ケースコントロール研究では、ゾルピデムにベンゾジアゼピンや抗うつ薬を併用すると、ゾルピデム単独投与と比較して自殺リスクの増加が示唆されたが、個人内比較デザインでは、リスクに有意な差は認められなかった」としている。
(鷹野 敦夫)