大規模多施設共同研究において、認知障害の有病率および院内死亡率に対する影響について検討されたエビデンスはほとんどない。イタリア・Fondazione Camplani HospitalのAlessandro Morandi氏らは、認知障害、認知症、せん妄の有病率および院内死亡率への影響を検討するため、高齢入院患者を対象とした大規模多施設共同試験「Italian Delirium Day:2016年」を行った。The Journals of Gerontology. Series A, Biological Sciences and Medical Sciences誌2019年5月16日号の報告。
対象は、急性期病院205施設の内科および外科病棟に入院した65歳以上の高齢急性期患者2,037例。構造化されたアプローチにより4つの認知障害グループ(認知障害を有する非認知症患者、認知症患者、せん妄患者、認知症とせん妄を合併した患者)を定義した。アウトカムは、各施設の研究者より報告された院内死亡率とした。
主な結果は以下のとおり。
・平均年齢は、81.17±7.7歳であった。
・各グループの患者数は、認知障害を有する非認知症患者483例(23.7%)、認知症患者230例(11.3%)、せん妄患者187例(9.2%)、認知症とせん妄を合併した患者244例(12.0%)で、いずれも認められなかった患者は893例(43.8%)であった。
・死亡患者数は、99例(4.8%)であった。
・せん妄患者(オッズ比:2.56、95%CI:1.29~5.09)および認知症とせん妄を合併した患者(オッズ比:2.60、95%CI:1.39~4.85)は、いずれも認められなかった患者と比較し、死亡リスクが高かった。
著者らは「せん妄を有する高齢入院患者は非常に多く、せん妄患者および認知症とせん妄を合併した患者では、院内死亡率が増加していた。臨床医は、これらの状態をシステマティックに評価し、重篤マーカーおよび差し迫った死の予測因子として認識すべきである」としている。
(鷹野 敦夫)