アストラゼネカ株式会社は、気管支喘息患者を取り巻く現状や喘息治療の実態を明らかにすることを目的とした患者調査を全国3,000名の患者に実施し、その結果が公表された。
調査結果は今回発表の「喘息患者さんの予定外受診・救急受診・救急搬送の現状」編のほか、「喘息患者さんの通院・服薬の現状」編、「重症喘息患者さんの現状」編という3つのテーマで公開される。監修は東田 有智氏(近畿大学病院 病院長)が担当した。
●調査概要
調査実施日:2019年4月15~26日
実施方法:インターネット調査
対象:全国の気管支喘息患者 3,000名(気管支喘息と診断されて直近1年以内に通院または入院の経験あり)
性別:男性1,539名、女性1,461名
発作で救急搬送されたことを主治医に伝える患者は半数
「気管支喘息の症状のコントロールについて」という問いでは、「症状がコントロールされた状態」と回答した患者が73.6%、「少し不十分」が24.1%、「まったくコントロールされていない」が2.2%と、おおむねコントロールできている患者が多数を占めた。
「現在の喘息治療で、喘息のない人と同じ日常生活を送れているか」という問いでは、「非常にそう思う」と回答した患者が20.8%、「どちらかというとそう思う」が48.8%、「どちらともいえない」が16.3%、「どちらかというとそうは思わない」が10.9%、「まったくそう思わない」が3.2%と、約7割の患者が健康な人と同じ日常生活を送っていると回答した。
「気管支喘息のために予定外受診、救急受診、入院などを経験した頻度はどれくらいか」という問いでは、「月1回以上」と回答した患者が12.3%、「月1回未満~年1回以上」が26.2%、「ここ1年はない」が61.5%だった。約6割の患者が急変した状況の診療がないと回答した。地域別でみると九州・沖縄地方(19.7%)、中部地方(12.1%)、四国地方(12.0%)で「月1回以上」と回答した患者が多かった。
「これまでに、気管支喘息の発作で救急搬送されたり、救急受診をしたことがあるか」という問いでは、「ある」と回答した患者が34.6%、「ない」が65.4%だった。地方別では、九州・沖縄地方(40.3%)、近畿地方(37.2%)、四国地方(36.1%)の順で多かった。
救急受診・救急搬送経験者(n=1,038)に「主治医に救急受診したことを伝えたか」という問いでは、「はい」と回答した患者が53.7%、「いいえ」が27.4%、「わからない」が18.9%だった。
「医師から説明を受けて、気管支喘息の悪化に関連しているものは何か」という問いでは、「好酸球の増加」(76.5%)、「ダニなどのアレルゲン」(62.5%)、「喫煙」(59.8%)、「妊娠」(58.3%)、「過去の重篤な発作」および「鼻炎・副鼻腔炎」(52.1%)の順で多かった。
さらなる医師と患者のコミュニケーションの進展が治療のカギ
これらの調査を踏まえ監修の東田 有智氏は「今回の調査結果から、6割に上る患者が、自分の症状はコントロールされている、あるいは、喘息の無い人と同じ日常生活を送れている、と感じていながら、ガイドラインで『コントロール不十分』『コントロール不良』と定義される状態にあると考えられることが示された。さらに、患者の3人に1人が喘息発作で救急搬送や救急受診などを経験している実態も明らかとなったほか、救急搬送を経験した患者の半数は主治医にその旨を伝えていた。そのほか、自分の症状悪化の要因が『好酸球の増加』であると、医師から説明を受けて認識している人が7割に上るなど、患者と主治医との間のコミュニケーションの現状もわかった。引き続き患者と主治医とがコミュニケーションを取り、患者がそれぞれの症状にあった治療に出会い、健康な人と変わらない日常生活を送ることを願う」とコメントを寄せている。
(ケアネット 稲川 進)