フルオロキノロン系およびキノロン系抗菌薬の添付文書について、2019年9月24日、厚生労働省より使用上の注意の改訂指示が発出された。今回の改訂は、フルオロキノロン系およびキノロン系抗菌薬のアキレス腱や精神、末梢神経障害に関連した副作用に関するもので、米国や欧州の添付文書が改訂されたことを受け、日本国内症例、公表論文等の情報に基づき添付文書改訂の必要性が検討されたことによるもの。
製剤ごとの改訂内容記載の違いに注意
改訂の概要は以下のとおり。
・「重大な副作用」の項に「末梢神経障害」「精神症状」を追記する。
・「重大な副作用」の項に「アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害」を追記する。
・「重大な副作用」の項の「アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害」の初期症状などの記載を整備する。または、「腱炎、腱断裂等の腱障害」の項を「アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害」とし、初期症状等の記載を整備する。
◆該当薬剤の一覧(商品名:承認取得者)
オフロキサシン[経口剤] (タリビット:アルフレッサファーマ、ほか)
メシル酸ガレノキサシン水和物 (ジェニナック:富士フィルム富山化学)
シタフロキサシン水和物 (グレースビット:第一三共、ほか)
シプロフロキサシン (シプロキサン:バイエル薬品、ほか)
シプロフロキサシン塩酸塩水和物 (シプロキサン:バイエル薬品、ほか)
トスフロキサシントシル酸塩水和物[経口剤] (オゼックス:富士フィルム富山化学、トスキサシン:マイランEPD、ほか)
ノルフロキサシン[経口剤] (バクシダール:杏林製薬、ほか)
パズフロキサシンメシル酸塩 (パシル:富士フィルム富山化学、パズクロス:田辺三菱製薬)
ピペミド酸水和物 (ドルコール:日医工)
プルリフロキサシン (スオード:MeijiSeikaファルマ)
モキシフロキサシン塩酸塩[経口剤] (アベロックス:バイエル薬品)
レボフロキサシン水和物[経口剤、注射剤] (クラビット:第一三共、ほか)
塩酸ロメフロキサシン[経口剤] (バレオン:マイランEPD、ほか)
薬剤ごとに注意喚起が異なるのはなぜか?
腱障害および精神症状については、すべてのフルオロキノロン系およびキノロン系抗菌薬の添付文書において注意喚起がなされるよう改訂が適切と判断された。これは、フルオロキノロン系およびキノロン系抗菌薬の多くの成分の現行添付文書で一定の注意喚起がなされているものの、腱障害についてはコラーゲン組織の障害が、精神症状についてはGABA神経の抑制などが発現機序として考えられ、当該抗菌薬に共通のリスクと判断されたためである。
一方、末梢神経障害については、フルオロキノロン系およびキノロン系抗菌薬に共通のリスクであることを示す発現機序や疫学的知見は乏しく、現時点で一律の改訂は不要と考えられている。しかし、トスフロキサシントシル酸塩水和物、レボフロキサシン水和物、メシル酸ガレノキサシン水和物については国内症例が集積していること、オフロキサシンは国内症例の集積はないもののレボフロキサシンのラセミ体であることから、改訂が適切と判断された。
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(ケアネット 土井 舞子)