以前の研究で、早期発症成人うつ病(EOD)患者と遅発性成人うつ病(LOD)患者では、脳灰白質の体積変化に違いがあることが示唆されていた。中国・昆明医科大学のZonglin Shen氏らは、皮質の厚さ(CT)がうつ病の発症年齢の影響を受けるかについて検討を行った。Neuroreport誌オンライン版2019年9月9日号の報告。
EOD患者54例、LOD患者58例、若者対照群57例、高齢対照群58例の高解像度MRI画像より検討を行った。うつ病の重症度は、ハミルトンうつ病評価尺度17項目(HDRS17)を用いて評価した。患者のCTと臨床スコアとの関連について分析を行った。
主な結果は以下のとおり。
・診断における主要な影響は、左吻側前帯状皮質(rACC)、右下側頭回、右外側部前頭眼窩野(lOFC)、両側脳梁周において有意に認められた。
・rACCおよび両側尾側前帯状皮質(cACC)において、CTに対する発症年齢の影響が顕著に認められた。
・診断による発症年齢の相互作用の影響は、両側rACCおよび右lOFCで認められた。
・EOD患者では、若者対照群と比較し、両側rACCにおけるCTの萎縮が観察された。
・LOD患者では、高齢対照群と比較し、lOFCにおけるCTの肥大が観察された。
・EOD患者では、LOD患者と比較し、右cACCおよび後帯状皮質(PCC)において皮質の萎縮が認められた。
・右cACCまたはPCCと症状重症度または罹病期間との間に有意な関連は認められなかった。
著者らは「うつ病患者は、発症年齢が異なると、CT変化に明確な違いが生じており、EODとLODの病理学的メカニズムが異なる可能性が示唆された」としている。
(鷹野 敦夫)