RET異常を有する甲状腺がんに対する新規治療薬のselpercatinib(LOXO-292)の試験結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、米国・Massachusetts General Hospital, Harvard Medical SchoolのLori Wirth氏より発表された。
本試験は、RET異常を有する甲状腺がんと非小細胞肺がんを対象にした国際共同のオープンラベル・シングルアームの第I/II相試験である。selpercatinibはRETタンパクに高い選択的親和性を有するTKIであり、今回は全甲状腺がんの10~20%に存在するRET変異甲状腺がんに関する発表である。
・対象:試験に登録されたRET点変異を有する甲状腺髄様がん(MTC)226例と、RET融合遺伝子を有する甲状腺がん27例のうち、cabozantinib(Cabo)とバンデタニブ(Vande)の治療歴のあるMTCの55例を初回解析対象とした
・試験群:selpercatinib 20~480mg/日(第I相試験)、320mg/日(第II相試験)
・評価項目:
[主要評価項目]奏効率(ORR)
[副次評価項目]奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、安全性
主な結果は以下のとおり。
・RET点変異のある症例143例のうち、57%はM918Tで、V804M/Lは8%、細胞外システイン変異は19%であった。
・RET融合のパートナー遺伝子は、CCDC6が52%、NCOA4が33%であった。
・今回解析対象55例は65%が男性、年齢中央値は57歳、前治療歴は中央値2ライン、脳転移あり7%、全例でCabo、Vande、それ以外のTKIの既治療歴があった。
・主治医判定によるORRは56%(CRは6%)で、CaboやVandeの治療歴による差はみられなかった。
・Cabo/Vandeの治療歴を持たないMTC76例では、ORR:59%(CRは1%)であった。
・追跡期間中央値(mFU)10.6ヵ月時点でのDOR中央値は未到達(イベント数は6例/29例)であった。
・mFU11.1ヵ月時点でのPFS中央値も未到達(イベント数は18例/55例)であった。
・RET融合遺伝子を有する甲状腺がんのORRは62%であった。
・Grade3/4治療関連有害事象は、高血圧9%、ALT上昇7%、AST上昇5%、下痢1%、有害事象による治療中止は1.7%と忍容性が認められ、多くの有害事象はGrade1/2であった。
Wirth氏は「RET異常を有する甲状腺がんに対する治療薬として現在承認されているTKI後の治療薬として、本剤は期待が持てる。2019年中には米国FDAに本剤の承認を申請する予定である」と述べている。
(ケアネット)