日本の胃がん患者における悪液質の実態/日本癌治療学会

提供元:ケアネット

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公開日:2019/10/29

 

 がん悪液質は体重減少と食欲不振を主体とした複雑な病態の疾患概念である。日本の胃がんにおいて悪液質を発症した場合の予後や経過についての報告は少ない。

 久留米大学病院の深堀 理氏らは、久留米大学病院および静岡がんセンター病院で化学療法を受けた進行胃がん患者を対象に、体重減少に焦点を当て、悪液質との相関を調べる後ろ向き観察試験を実施。第57回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で発表した。主要評価項目は、化学療法導入から悪液質発症までの期間、副次評価項目は悪液質と血液検査結果、全生存期間(OS)、副作用との関連。悪液質の定義は、5%を超える体重減少、BMI 20kg/m2未満の場合は2%以上の体重減少とした。

 主な結果は以下のとおり。

・2010年9月1日~2016年8月31日、131例が登録された。患者の年齢中央値は68.0歳、男性76.3%、BMI中央値は21.2、PS0~1が90%超であった。
・化学療法開始から悪液質発症までの期間は、12週以内が53.4%であった。その後12~24週で16.0%、24~36週で7.6%であった。48週間の時点で87.7%の患者が悪液質を発症した。
・OS中央値は、48週時点で悪液質を発症した患者群では459日、悪液質非発症群では851日で、発症群で有意に予後不良であった(p=0.002)。12週(p=0.0167)と24週(p=0.0017)でも同様に発症群で予後不良であった。
・悪液質発症の有無と、胃がんの予後不良因子とされる、PS、転移臓器個数、ALP値で調整解析を行ったところ、PSが独立した予後不良因子であった。しかしながら、悪液質発症はHR 1.39(95%CI:0.95~2.0)であり、予後不良の傾向は示していた。
・悪液質発症の有無と副作用の関連をみると、食欲低下と疲労のいずれも、悪液質あり患者群では発現頻度が高く、重症度も高かった。

 進行胃がんにおける悪液質は、治療開始12週以内に半数以上の患者に発症していた。また、悪液質を発症した患者群は、発症時期によらず予後不良であることを示した。さらに、悪液質を発症した患者群の化学療法の副作用(食欲低下・疲労)の発現頻度が高く、重症化していることが示された。

(ケアネット 細田 雅之)