潰瘍性大腸炎(UC)において、内視鏡検査は侵襲的であり、症状を悪化させることもある。そのため、代わりとなる信頼性の高い非侵襲性マーカーが求められてきた。今回、韓国・釜山大学校のDae Gon Ryu氏らは、糞便マーカーである便中カルプロテクチン(Fcal)と免疫学的便潜血検査(FIT)がUCの内視鏡的活動度とよく相関することを確認した。また、便中カルプロテクチンは内視鏡的活動度の予測、免疫学的便潜血検査は粘膜治癒の予測に有用である可能性が示された。Medicine(Baltimore)誌2019年9月号に掲載された報告。
試験期間は2015年3月~2018年2月まで。期間中に、大腸内視鏡検査、便中カルプロテクチン、免疫学的便潜血検査を受けたUC患者128例から得た合計174件の結果を、後ろ向きに評価した。このうち、診断不明の6件、内視鏡検査日に糞便検体未提出の15件は除外された。
評価した項目は、各糞便マーカーと内視鏡的活動度の相関および予測精度、粘膜治癒を評価するうえでの各糞便マーカーの感度、特異度、陽性/陰性的中率であった。内視鏡的活動度はMayo内視鏡スコア(MES)、内視鏡的重症度指数(UCEIS)の両方により評価し、予測精度はROC曲線下面積(AUC)により評価した。また、MES 0かつUCEIS 0~1を粘膜治癒と定義した。
各糞便マーカーと内視鏡的活動度は、いずれも統計的に有意な相関を示した(MES Fcal:r=0.678、p<0.001、FIT:r=0.635、p<0.001、UCEIS Fcal:r=0.711、p<0.001、FIT:r=0.657、p<0.001)。
便中カルプロテクチンは免疫学的便潜血検査より、内視鏡的活動度の予測精度で統計的に優れていた(MES AUC:0.863 vs.0.765、p<0.001、UCEIS AUC:0.847 vs.0.757、p<0.001)。一方、粘膜治癒を評価する感度は、免疫学的便潜血検査のほうが便中カルプロテクチンよりも優れていた(MES:98.0% vs.78.4%、UCEIS:94.9% vs.74.6%)。
これらの結果から研究グループは、便中カルプロテクチンは、活動期のUC患者において粘膜病変の活動性および治療反応性評価に使用できる可能性があり、免疫学的便潜血検査は、粘膜治癒後のUC患者において、再発モニタリングに使用できる可能性がある、との見解を示した。
(ケアネット 野辺 加織)