小児の潰瘍性大腸炎、ステロイドフリー寛解予測因子とは/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2019/04/12

 

 新たに潰瘍性大腸炎(UC)と診断された小児患者において、52週時のステロイドフリー(メサラジン単独療法)寛解の予測に、初期の臨床的活動性および4週までの治療反応が有用であることが、米国・コネチカット小児医療センターのJeffrey S. Hyams氏らによる検討の結果、明らかにされた。新たに診断された小児UCについては、エビデンスベースのアウトカムデータの不足が、作成された治療計画に不確実性をもたらしている、として問題視されていた。著者は、「個別的な臨床的/生物学的特性を明らかにすることで、確固たるUC治療方針の提示につながることが示された」と述べている。Lancet誌オンライン版2019年3月29日号掲載の報告。

4~17歳の新規UC患者で52週時のステロイドフリー寛解を評価
 研究グループは、UC小児患者を対象に、治療前の臨床的因子やトランスクリプトームおよび微生物因子により、疾患経過を予測できるかを検証するため、多施設共同発端コホート研究「The predicting response to standardized pediatric colitis therapy study:PROTECT研究」を行った。

 アメリカとカナダの29施設で、新たにUCと診断された4~17歳の小児患者(小児用活動性指標のPUCAIスコア≧10)を登録し、免疫調整薬(チオプリン)/抗TNFα療法へ段階的に切り替えるための事前に決められた基準に従い、メサラジンまたはステロイドを投与する標準治療を行った。また、治療前にRNAシーケンシングにより直腸の遺伝子発現を、16Sシーケンシングを用いて直腸および糞便の微生物叢を調べた。

 主要評価項目は、52週時でのステロイドフリー寛解(メサラジン以外の治療なし)とし、ロジスティック回帰モデルを用いて要因と主要アウトカムとの関連性を評価した(per-protocol解析)。

4週までの臨床的寛解がステロイドフリー寛解の予測に重要
 2012年7月10日~2015年4月21日に467例が登録され、428例が薬物療法を開始した。このうち52週時に評価が可能だったのは400例(93%)で、386例(90%)が試験を完遂した。

 52週時のステロイドフリー寛解率は38%(150/400例)で、うち147例(98%)がメサラジンを内服しており、3例(2%)は何も内服していなかった。400例中74例(19%)が免疫調整薬単独投与、123例(31%)が抗TNFα療法、25例(6%)が結腸切除へ治療を変更していた。

 ベースラインの臨床的重症度が低く、ヘモグロビン高値、4週時の臨床的寛解が、52週時でのステロイドフリー寛解達成と関連していた(386例、ロジスティックモデルのROC曲線下面積[AUC]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.65~0.75、特異度77%[95%CI:71~82])。

 274例の独立コホートでベースライン重症度と4週時の寛解について検証した結果、臨床的な予測因子を調整後、抗菌ペプチド遺伝子シグネチャー(オッズ比[OR]:0.57、95%CI:0.39~0.81、p=0.002)、ルミノコッカス属の存在度(OR:1.43、95%CI:1.02~2.00、p=0.04)、Sutterella(OR:0.81、95%CI:0.65~1.00、p=0.05)が52週時のステロイドフリー寛解と関連することが確認された。

(医学ライター 吉尾 幸恵)