中国・北京大学健康科学センターのBang Zheng氏らは、不眠症状と心・脳血管疾患(CVD)発症リスクとの関連を調査し、リスク軽減が可能な因子を特定するため検討を行った。Neurology誌オンライン版2019年11月6日号の報告。
中国全土の10地域から参加者を募集したプロスペクティブコホート研究であるChina Kadoorie Biobankとして実施した。ベースライン時に脳卒中、冠動脈精神疾患、がんのいずれもない30~79歳の成人48万7,200人を対象にデータ分析を行った。ベースライン時の3つの不眠症状(入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒)および3日/週以上の日中の機能障害を自己報告により評価した。CVD発症は、2016年までの疾病レジストリおよび健康保険データベースよりフォローした。
主な結果は以下のとおり。
・フォローアップ期間中(中央値:9.6年)に、CVDが認められた成人は13万32人であった。
・Cox回帰分析では、3つの不眠症状は、総CVDリスクの増加と関連が認められた。
●入眠困難 ハザード比[HR]:1.09(95%信頼区間[CI]:1.07~1.11)
●中途覚醒 HR:1.07(95%CI:1.05~1.09)
●早朝覚醒 HR:1.13(95%CI:1.09~1.18)
・不眠症状を有する成人は、虚血性心疾患(HR:1.13、95%CI:1.09~1.17)および虚血性脳卒中のリスクが高かったが、出血性脳卒中は無関係であった。
・3つの不眠症状を有する成人では、不眠症状のない人と比較し、以下のリスクが高かった。
●CVD 18%上昇
●虚血性心疾患 22%上昇
●虚血性脳卒中 10%上昇
・3つの不眠症状とCVD発症率との関連は、若年またはベースライン時に高血圧ではない成人おいて、一貫して強かった(p for interaction<0.05)。
著者らは「不眠症状は、CVD発症に対する独立したリスク因子であり、とくに若年または高血圧を発症していない成人では注意が必要である」としている。
(鷹野 敦夫)