2019年12月10日、日本糖尿病学会は「メトホルミン塩酸塩における発がん物質の検出に対する対応について」(事務連絡 令和元年12月9日 厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課および厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課)の発出を受け、文書を公表した。
わが国においては、今のところ従前通りにメトホルミンを服用しても問題はないとされている。日本糖尿病学会は、厚労省が出した「患者から本件について相談を受けた場合には、糖尿病に対する治療の必要性を説明するとともに、同剤の服用を中止しないように回答する」旨の事務連絡に沿った対応を呼び掛けている。
現時点では、わが国のメトホルミン製剤から、発がん性物質であるN-ニトロソジメチルアミン(NDMA)は検出されておらず、国内各企業において調査中の段階だ。メトホルミンの自主回収に着手した旨を発表したシンガポール保健科学庁は、「検出されたNDMAの量は1日許容摂取量(0.0959μg/日)を上回るものの極微量であり、回収対象となっている製剤を短期間服用したことによるリスクはきわめて低い」と報告している。また、「1日許容摂取量のNDMAを70年間毎日摂取した場合であっても、発がんリスクの上昇は懸念されない」とアナウンスしている。
なお、欧州医薬品庁(EMA)・アメリカ食品医薬品局(FDA)も同様に、医療従事者に相談なく、自己判断でメトホルミン製剤の服用を中止しないよう注意喚起を行っている。
(ケアネット 堀間 莉穂)