うつ病は、世界中で問題となる疾患の1つであり、再発率が高いため、うつ病発症を予防することが重要である。メタ解析において、不眠症が、うつ病の修正可能なリスク因子であることが示唆されていたが、これまでの研究では、不眠症がうつ病前の残存症状なのか、うつ病の併存症状なのかについては、十分に考慮されていなかった。オランダ神経科学研究所のTessa F. Blanken氏らは、睡眠障害がうつ病のリスク因子であるかを検討するため、6年間のプロスペクティブ研究を実施した。Sleep誌オンライン版2019年12月2日号の報告。
対象は、うつ病および不安症に関するオランダの研究より、これまでにうつ病を経験していない参加者768例。合計6年間にわたり、4回の反復調査を実施し、フォローアップを行った。ベースライン時の不眠症の重症度、短時間睡眠、個々の不眠症に関する問題が、フォローアップ期間中にうつ病発症を予測したかを評価するため、Cox比例ハザード分析を用いた。個々の不眠症に関する問題の中に、直接的な予測因子があるかを評価するため、ネットワークアウトカム分析の新しい手法を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・6年間のフォローアップ期間中にうつ病を発症した参加者は、141例(18.4%)であった。
・うつ病発症の予測は、睡眠時間ではなく、不眠症の重症度との関連が認められた(HR:1.11、95%CI:1.07~1.15)。この関連は、個々の不眠症に関する問題の中で、入眠障害により推進された(HR:1.10、95%CI:1.04~1.16)。
・ネットワークアウトカム分析では、同様の結果が得られ、入眠障害に関する問題のみが、うつ病発症を直接的に予測した。
著者らは「入眠障害は、うつ病発症のリスク因子であることが示唆された。うつ病を予防し、世界的な負担を軽減するために、各不眠症状の中で、入眠障害をターゲットとした治療が有益な可能性がある」としている。
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(鷹野 敦夫)