新型コロナウイルス感染症を巡り、国の専門家会議(座長:脇田 隆字 国立感染症研究所所長)は3月2日、厚生労働省の対策本部が分析した内容に基づき現時点の見解をまとめた。国内では、これまで感染者が出ていなかった自治体においても日々新たな感染者が確認され、拡大傾向が続いていると見られる。見解では、北海道のデータ分析などにより、重症化する割合が低い若年層から多くの中高年層に感染が及んでいること、屋内の閉鎖的な空間における濃厚接触が、患者クラスターの発生および感染の急速な拡大を招く一因になっていることなどを挙げた。
「新型コロナウイルス感染症対策の見解」の主な内容は以下のとおり。
【この一両日で明らかになったこと】
・症状の軽い人も、気付かないうちに感染拡大に重要な役割を果たしている。
・若年層は重症化する割合が非常に低く、感染拡大の状況が見えないため、結果として多くの中高年層に感染が及んでいる。
・これまでの国内における感染者のうち、重症・軽症にかかわらず約80%は、ほかの人に感染させていない。
・一方で、一定条件を満たす場所において、1人の感染者が複数人に感染させた事例が報告されている。具体的には、ライブハウス、スポーツジム、屋形船、ビュッフェスタイルの会食、雀荘、スキーのゲストハウス、密閉された仮設テントなど。
・屋内の閉鎖的な空間で、人と人とが至近距離で、一定時間以上交わることで患者クラスターが発生する可能性が示唆される。
・これまでのデータによると、有症者の約80%が軽症、14%が重症、6%が重篤となっているが、重症者の約半数は回復している。
・重症者においても、最初は普通の風邪症状(微熱、咽頭痛、咳など)から始まっており、その段階では重症化するかどうかの判断がつきにくい。
・重症者は、普通の風邪症状が出て約5~7日程度で症状が急速に悪化し、肺炎に至っている。
【北海道の感染状況となすべき対策】
・推定発症者数は、日ごとに急速に増加しており、この1~2週間は人と人との接触を可能なかぎり控えるなどの積極的対応が必要。
・北海道には中国からの旅行者が多く、そこから感染が広がったと考えられる。
・北海道の都市部においては、社会・経済活動が活発な人々が感染リスクの高い場所に多く集まりやすく、気付かないうちに感染していたと考えられる。なかでも、症状の軽い若年層が他圏域に移動することで複数地域に感染が拡大し、高齢層の有症者が報告されたことで感染の拡大状況が初めて把握された。
・人と人との接触を最大限に避けるなどの適切な行動により、新規の感染者数は急速に減少すると見込まれる。ただし、潜伏期間があるため、患者数の減少を確認するまでにはタイムラグが生じる。おおむね2週間経過しなければ、行動変容の効果は評価できない。
・感染症の中には、集団免疫の獲得により感染の連鎖が断ち切られるケースもあるが、現在の感染状況では集団免疫を期待できるレベルではない。
・感染者の再感染についてもいまだ不明である。
・感染拡大抑制のために、(1)軽い風邪症状でも外出を控える、(2)規模の大小にかかわらず、風通しの悪い空間で、人と人が至近距離で会話する場所やイベントは控える。
・事業所活動については、テレワーク、リモートワーク、オンライン会議など、人と人が接触しない形態を活用し、出張は最低限に抑制する。
【全国の10~30代へのお願い】
・新型コロナウイルス感染による重症化リスクが低い世代だが、ウイルスの特徴により、軽症者が重症化リスクの高い人に感染を広める可能性がある。とくにこの世代は、人が集まる風通しが悪い場所を避けてほしい。
(ケアネット 鄭 優子)