出産前後のうつ病は、有病率が高く、深刻な影響を及ぼすため、その予防は重要である。これまでのシステマティックレビューおよびメタ解析では、周産期うつ病リスクを有する女性に対する心理学的介入の有効性が示唆されている。しかし、出産前の一般的な予防に焦点を当てた研究は、あまりなかった。東京大学の安間 尚徳氏らは、周産期うつ病に対する出産前の心理学的介入の影響(とくに一般的な予防に焦点を当て)を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2020年5月12日号の報告。
2019年1月28日までの公開されたランダム化比較試験を、4つの電子データベース(Cochrane Controlled Register of Trials[CENTRAL]、Embase、PubMed、PsycINFO)より検索した。まず、12人の研究者がタイトルとアブストラクトのスクリーニングを行い、独立した2人の研究者が、それぞれ全文レビューを行った。メタ解析については、Review Manager 5.3 for Windowsを用いてランダム効果モデルを実施した。サブグループ解析は、認知行動(CB)療法をベースとした介入に関する研究について実施した。
主な結果は以下のとおり。
・最初に検索された研究は、1万3,026件であった。
・重複を削除した後、9,919件がスクリーニングされ、最終的に18件が選択基準を満たした。
・メタ解析では、出産前の心理学的介入は、出産前後のうつ病に対し有意な効果を示した(不均一性は中~高レベル)。
●出産前のうつ病:SMD=0.28(95%CI:0.11~0.44)、不均一性I2=61%(p=0.01)
●出産後のうつ病:SMD=0.37(95%CI:0.08~0.66)、不均一性I2=84%(p<0.001)
・サブグループ解析では、出産前のCB療法ベースの介入は、出産前のうつ病に対し有意な効果が認められたが(不均一性は高レベル)、出産後には認められなかった。
●出産前のうつ病:SMD=0.53(95%CI:0.13~0.94)、不均一性I2=85%(p=0.001)
●出産後のうつ病:SMD=0.45(95%CI:-0.03~0.92)
・本研究は、英語で発表された研究のみを対象としており、また出産前後のうつ病の評価にはさまざまな方法が用いられているため、研究全体の不均一性が高レベルであった。
著者らは「出産前の心理学的介入は、出産前後のうつ病に対し一般的な予防効果が期待できる。しかし、含まれた研究の方法論的な質があまり高くないため、決定的な結果とはいえない。今後、適切に設計された研究によるエビデンスが求められる」としている。
(鷹野 敦夫)