スペイン・Hospital Universitario Insular de Gran CanariaのDelvys Rodriguez-Abreu氏は、PD-L1陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療に対する抗TIGIT抗体tiragolumabとアテゾリズマブ併用とアテゾリズマブ単剤を比較する無作為化二重盲検第II相試験CITYSCAPEの結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表。tiragolumabとアテゾリズマブの併用はアテゾリズマブ単独と比較してITT集団での奏効率(ORR)の向上と無増悪生存期間(PFS)の延長が認められたと報告した。
TIGIT(T-cell immunoreceptor with immunoglobulin and ITIM domains)は細胞傷害性T細胞やナチュラル・キラー細胞上に存在する免疫チェックポイント受容体。がん細胞はTIGITと結合することで免疫の攻撃を回避していることがわかっている。TIGITの発現はPD-L1の発現に関連しているとされ、とくに肺の腫瘍浸潤T細胞で多く発現することがわかっている。tiragolumabは抗TIGITモノクローナル抗体で、アテゾリズマブを併用することで高い抗腫瘍効果を示す可能性があると考えられている。
・対象:TPS1%以上のPD-L1陽性StageIV NSCLC初回治療患者 135例
・試験群:tiragolumab+アテゾリズマブ3週ごと(tiragolumab群、67例)
・対照群:プラセボ+アテゾリズマブ3週ごと(プラセボ群、68例)
両群とも投与期間は病勢進行(PD)あるいは臨床的メリットが失われるまで投与
・評価項目:
[主要評価項目]ORR、PFS
[副次評価項目]奏効持続期間(DoR)、全生存期間(OS)、患者報告アウトカム(PRO)
主な結果は以下の通り。
・ITT集団でのORR はtiragolumab群37%、プラセボ群21%であった。
・TPS≧50%のORRはtiragolumab群66%、プラセボ群24%であった。
・TPS1〜49%のORRはtiragolumab群16%、プラセボ群18%であった。
・ITT集団でのPFS中央値はtiragolumab群5.55ヵ月、プラセボ群が3.88ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.58、95%信頼区間[CI]:0.38~0.89)。
・TPS≧50%のPFS中央値はtiragolumab群評価不能、プラセボ群が4.11ヵ月であった(HR:0.30、95%CI:0.15~0.61)。
・TPS1〜49%のPFS中央値はtiragolumab群4.04ヵ月、プラセボ群が3.58ヵ月であった(HR:0.89、95%CI:0.53~1.49)。
・全有害事象発現率はtiragolumab群99%、プラセボ群96%、重篤な有害事象発現率はtiragolumab群37%、プラセボ群35%であった。
Abreu氏は、「ORR、PFSの改善効果はTPS発現が50%以上のPD-L1陽性でより大きなものとなった。tiragolumab群の忍容性は良好で、安全性プロファイルはプラセボ群と同様。免疫関連の副作用はtiragolumab群のほうで多かったが、そのほどんとがGrade1~2で管理可能だった」と評した。
(ケアネット)