日本渡航医学会と日本産業衛生学会は2020年5月より両学会のサイト上で、産業医を中心とした産業保健従事者向けに「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド」を公開している。6月3日には感染状況などの変化を踏まえ、改訂した第2版を公開した。
このガイドでは、産業保健職の役割や感染症流行時におけるリスクコミュニケーションなどの基本事項を押さえたうえで、国内の新型コロナウイルス感染症の流行状況を5つのフェーズに分け、各フェーズにおける主要な対応をまとめている。
続けて、職域における感染予防対策の基本として、個人の感染予防(手指衛生および咳エチケット)、従業員の感染管理(従業員の健康状態のモニタリング方法、相談および受診の目安)を詳細に紹介。従業員の中に「疑い者」が出た場合、職場復帰の目安として1) 発症後に少なくても 8 日が経過している、2) 薬剤を服用していない状態で、解熱後および症状消失後に少なくても3日が経過している、という両方の条件を満たすこと、と定義した。また、「医療機関には原則として『陰性証明書や治癒証明書』の発行を求めてはならない」という注意も示されている。
事業所内の消毒方法や消毒時の注意点、職域においてソーシャルディスタンシングを保つためのツールやヒント、従業員に濃厚接触者や感染者が発生した場合の対応方法や保健所との連携法、出張者や駐在員への対応法など、51ページにおよぶ内容は実践的で多岐に渡るテーマが網羅されている。在宅勤務の広がりに伴う従業員のメンタルヘルス対策についても言及している。
企業に向けてアドバイスを行う産業医・産業保健職はもちろんのこと、実際の対策にあたる企業の総務・労務担当者にとっても役立つ内容が多い。
(ケアネット 杉崎 真名)