生殖細胞系列BRCA1/2の病原性変異体(pathogenic variant:PV)を持つ男性のがん早期発見とリスク低減のために、イタリア・Sapienza University of RomeのValentina Silvestri氏らは、BRCA1とBRCA2のそれぞれのPVキャリアにおけるがんスペクトルと頻度を調査した。その結果、がん発症者(とくに乳がん、前立腺がん、膵がん)および複数の原発腫瘍発症者は、BRCA1 PVキャリアよりBRCA2 PVキャリアである可能性が高かった。JAMA Oncology誌オンライン版2020年7月2日号に掲載。
がんを発症した人はBRCA1よりBRCA2 のPVキャリアである可能性が高い
本研究は後ろ向きコホート研究で、Consortium of Investigators of Modifiers of BRCA1/2(CIMBA)を通じて共同研究している世界33ヵ国53グループにより、1966~2017年にがん遺伝学クリニックで集めた18歳以上の6,902人(
BRCA1 PVキャリア3,651人、
BRCA2 PVキャリア3,251人)が対象。臨床データと病理学的特徴を収集した。オッズ比(OR)はすべて、年齢、出身国、初回面接の暦年で調整した。
BRCA1と
BRCA2のPVキャリアにおけるがん発症の違いを調査した主な結果は以下のとおり。
・対象の男性6,902人(年齢中央値:51.6歳、範囲:18~100歳)のうち、1,376人(19.9%)に1,634件のがんが診断され、1,376人中922人(67%)が
BRCA2 PVキャリアであった。
・何らかのがんを発症した人は、
BRCA1 PVキャリアより
BRCA2 PVキャリアの可能性が高く(OR:3.23、95%信頼区間[CI]:2.81~3.70、p<0.001)、原発腫瘍が2つ発症(OR:7.97、95%CI:5.47~11.60、p<0.001)および3つ発症(OR:19.60、95%CI:4.64~82.89、p<0.001)でも同様であった。
・乳がん(OR:5.47、95%CI:4.06~7.37、p<0.001)および前立腺がん(OR:1.39、95%CI:1.09~1.78、p=0.008)の頻度は、
BRCA2 PVキャリアである可能性と関連していた。
・乳がん、前立腺がん以外では、膵がんが
BRCA2 PVキャリアである可能性が高く(OR:3.00、95%CI:1.55~5.81、p=0.001)、大腸がんは
BRCA2 PVキャリアである可能性が低かった(OR:0.47、95%CI:0.29~0.78、p=0.003)。
(ケアネット 金沢 浩子)