日本のがんサバイバーらのアンメットニーズを、電話相談の主訴から、男女差を主眼に解析し、その特徴をあぶりだした神奈川県立がんセンター 臨床研究所 片山佳代子氏らの研究が、Patient Education and Counseling誌2020年5月16日に掲載された。
分析されたがん患者の電話相談は10,534件。男女別相談者別にデータのコーディングを行い、複数の関連コードをまとめ主要な19のカテゴリーを生成した。属性と生成されたカテゴリーのクロス集計を行い、語句と性別の関係をコレスポンディング分析によって可視化している。またテキストマイニング手法を使い出現頻度の高かった単語「不安」と「心配」の係受け関係となるkeywordを抽出し可視化することで男女差を浮き彫りにした。
主な結果は以下のとおり。
・全相談件数のうち、約7割が女性から相談であった。
・男性は胃がん(11.8%)、女性では乳がん(18.4%)の相談が多く、男女共にがんの確定診断のないものからの相談が20%を占めた。
・男女に共通して多かった相談カテゴリーは「治療」(各々21.6%、31.0%)、「がんの疑い」(各25.2%)、「医療者への不信感/コミュニケーションの欠如」(20.2%、20.8%)、「手術」について(19.5%、30.2%)となった。
・男性は女性と比べて検査や医療施設に関する質問や、転院相談、一般的ながん情報の収集が多く、日常生活への不安や精神的なサポートのニーズは少なかった。男性サバイバーは的確な情報を収集し、自分で解決するスタイルを好むようである。医療者への不満に対して見切りも早く、そのため転院相談が多いのではないかと関連が考えられる。
・男性は精神的サポートを必要としていないのか、あってもしないのかは本研究からは不明としている。
・一方女性は、広範囲な事柄について直接的な支援を求めており、心配や不安に感じる事柄が多岐に渡る。妻として夫の禁煙相談や飲酒に関する相談や、遠隔地で独居している親の相談など家族の代表としての相談も多い。こうしたことを鑑みると、地域の患者会やピアサポートを紹介することは理にかなっているようである。
筆者は、日本のがんの相談支援には性別による特有のスタイルを理解し、それに対応する必要があると述べている。ピアサポーターの養成等、相談現場での活用が望まれる。
男性の場合、一般には的確な情報を渡しつつ、一方 で 嗜癖物の乱用 がないか医療現場や相談支援者が確認すること、またがん情報の発信においても、患者視点のニーズを把握し、患者目線の情報を提供するオンラインプラットフォームが必要であると述べている。
(ケアネット)