BRCA変異を有する若年乳がん患者にとって、妊娠は安全であることを示す結果が明らかとなった。乳がん後の妊娠および妊娠による乳がん予後への影響を調べた国際多施設共同後ろ向きコホート試験の結果を、イタリア・ジェノバ大学のMatteo Lambertini氏らが、Journal of Clinical Oncology誌2020年9月10日号に報告した。
2000年1月~2012年12月に、浸潤性早期乳がんと診断された、40歳以下の生殖細胞系列BRCA遺伝子変異を有する患者が本研究に組み入れられた。主要評価項目は、妊娠率、および乳がん後の妊娠の有無による患者間の無病生存期間(DFS)。副次的評価項目は、妊娠のアウトカムと全生存期間(OS)であった。生存時間分析は、既知の予後因子を制御するGuarantee-Time Bias(GTB)を考慮して調整された。
主な結果は以下のとおり。
・生殖細胞系列BRCA遺伝子変異を有する1,252例(BRCA1:811例、BRCA2:430例、 BRCA1 / 2:11例)のうち195例が、乳がん後に少なくとも1回の妊娠を経験した(10年の妊娠率:19%、95%信頼区間[CI]:17~22%)。
・人工流産および流産は、それぞれ16例(8.2%)および20例(10.3%)で発生した。出産した150例(76.9%、乳児170人)のうち、妊娠合併症が13例(11.6%)、先天性異常は2例(1.8%)発生した。
・乳がん診断後の追跡期間中央値8.3年における、妊娠コホートと非妊娠コホートの間で、DFS(調整ハザード比[HR]:0.87、95%CI:0.61~1.23、p=0.41)およびOS(調整HR:0.88、95%CI:0.50~1.56、p=0.66)の差はみられなかった。
研究者らは、生殖細胞系列BRCA遺伝子変異を有する患者の乳がん後の妊娠は、母親の予後を明らかに悪化させることなく安全であり、良好な胎児転帰と関連したと結論付けている。そのうえで「これらの結果は、将来の妊娠・出産について、BRCA変異を有する乳がん患者に安心感をもたらす」とまとめている。
(ケアネット 遊佐 なつみ)