生殖細胞系列のBRCA遺伝子(gBRCA)変異のあるHER2陰性進行乳がんに対して、カルボプラチン+パクリタキセルへのPARP1/2阻害薬veliparibの上乗せ効果を検討した第III相BROCADE3試験のサブグループ解析で、ホルモン受容体(HR)陽性でもトリプルネガティブ(TN)でも無増悪生存期間(PFS)を改善させることが示された。カナダ・Centre Hospitalier de l'Universite de MontrealのJean-Pierre Ayoub氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer Virtual Meeting 2020、2020年5月23~24日)で報告した。なお、主要評価項目であるPFSについては、すでに2019年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で有意に改善することが報告されている。また、HRの有無によるPFSの解析は事前に規定されていた。
・対象:gBRCA1/2変異陽性のHER2陰性進行乳がん(転移に対する細胞傷害性の抗がん剤治療が2レジメン以下、プラチナ製剤は1レジメン以下、投与終了から12ヵ月以内に進行なし)
・試験群:veliparib(120mg 1日2回、Day -2~5)+カルボプラチン(AUC 6、Day 1)/パクリタキセル(80mg/m2、Day 1、8、15)21日ごと 337例
・対照群:プラセボ+カルボプラチン/パクリタキセル 172例
・主要評価項目:PFS
主な結果は以下のとおり。
・ITT集団509例のうち、HR陽性が266例(52%)、TNが243例(48%)であった。
・HR陽性患者において、治験責任医師の評価によるPFS中央値は、veliparib群(174例)が13.0ヵ月(95%CI:12.1~16.6)、プラセボ群(92例)が12.5ヵ月(95%CI:10.2~13.2)であった(ハザード比[HR]:0.69、95%CI:0.52~0.93、p=0.013)。2年PFSはveliparib群27.5%、プラセボ群15.3%、3年PFSはveliparib群17.5%、プラセボ群が8.6%であった。
・TN患者において、治験責任医師の評価によるPFS中央値は、veliparib群(163例)が16.6ヵ月(95%CI:12.3~22.7)、プラセボ群(80例)が14.1ヵ月(95%CI:11.0~15.8)であった(HR:0.72、95%CI:0.52~1.00、p=0.051)。2年PFSはveliparib群40.4%、プラセボ群25.0%、3年PFSはveliparib群35.3%、プラセボ群13.0%であった。
・HR陽性患者において、OS中央値は、veliparib群が32.4ヵ月(95%CI:26.5~37.9)、プラセボ群が27.1ヵ月(95%CI:22.9~35.2)であった(HR:0.96、95%CI:0.68~1.36、p=0.829)。
・TN患者において、OS中央値は、veliparib群が35.0ヵ月(95%CI:24.9~NE)、プラセボ群が30.0ヵ月(95%CI:24.5~NE)であった(HR:0.92、95%CI:0.62~1.36、p=0.683)。
・HR陽性、TNの両サブグループにおいて、全Gradeの貧血、好中球減少症、悪心、下痢の発現率がveliparib群でプラセボ群より5%以上高かった。
(ケアネット 金沢 浩子)