うつ病の予防として、運動介入が注目されている。しかし、うつ病予防に対する運動介入の効果を検討したエビデンスの結果は、研究間で大きく異なっている。オランダ・アムステルダム自由大学のMandy X. Hu氏らは、うつ病予防のための運動介入の効果を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。BMC Public Health誌2020年8月18日号の報告。
2018年7月までの研究を、PubMed、Embase、PsycINFO、Cochraneよりシステマティックに検索した。一般集団におけるうつ病または抑うつ症状の発症に対する、運動介入の効果を検討したランダム化比較試験のメタ解析を分析した。うつ病患者の治療に焦点を当てた研究は除外した。2人の独立した執筆者によりスクリーニングを行い、AMSTAR 2を用いてメタ解析の質を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・8件のメタ解析が抽出され、これらに含まれていた134研究の重複はほとんどなかった。
・すべてのメタ解析において、うつ病ではなく抑うつ症状がターゲットとされていた。
・メタ解析の質は、中程度:5件、低:3件であった。
・小児、青年、成人、高齢者の抑うつ症状の軽減に対する運動介入は、6件のメタ解析で有意な効果が認められたが、2件のメタ解析では認められなかった(エフェクトサイズの範囲:-0.10~-0.81)。
・エビデンスが不足しているため、うつ病に対する性別の影響や運動の内容については、明らかにできなかった。
・しかし、いくつかの研究結果では、軽度の運動でも、高負荷運動と同様の効果があることが示唆された。
・研究の質や運動の内容の違いにより、1次研究間での不均一性が高かったと考えられる。
著者らは「運動介入が、幅広い年齢層の一般集団において、抑うつ症状の軽減や予防に有用である可能性が示唆された」としている。
(鷹野 敦夫)