北海道大学大学院医学研究院の豊嶋 崇徳教授ら研究グループは、9月29日の記者会見で、新型コロナウイルスのPCR検査について、約2,000例の症例で唾液と鼻咽頭スワブの診断精度を比較した結果、いずれも感度は約90%、特異度は両者とも99.9%だったと発表した。PCR検査を巡っては、唾液による検査が簡便かつ医療従事者の感染リスク防止の観点で有用と考えらえるが、感度は未知数であり、鼻咽頭スワブでも70%程度と見られていた。今回の結果は、従来の見立てを大きく上回り、PCR検査の信頼性を裏付ける形となった。研究をまとめた論文は、Clinical Infectious Diseases誌2020年9月25日号に掲載された。
本研究では、国際便での空港検疫および保健所での濃厚接触者で、無症状の1,924例について、唾液および鼻咽頭スワブを採取し、PCR検査を実施した。その結果、陽性例が唾液で48例、鼻咽頭スワブで46例確認され、感度は唾液で92%(95%信頼区間[CI]:83~97%)、鼻咽頭スワブで86%(95%CI:77~93%)、特異度は両者共に99.9%超であった。また、陽性例のウイルス量は両者で同等に検出されたという。
研究グループは、従来不明瞭であったPCR検査の精度が、唾液と鼻咽頭スワブいずれも高い信頼性に基づくものであることが本結果により実証されたと同時に、鼻咽頭スワブの採取よりも安全かつ簡便で、採取者の感染リスクや被採取者の不快感も少ない自己唾液採取が、スクリーニング検査の標準法として推奨できると結論付けている。
(ケアネット 鄭 優子)