HER2+進行乳がんへのT-DXd、第I相/第II相試験の併合解析と日本人解析/日本乳癌学会

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2020/10/16

 

 抗体薬物複合体であるトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、DS-8201)のFirst-in-human第I相試験であるJ101試験および非盲検国際多施設共同第II相試験であるDESTINY-Breast01試験において、承認用量で投与されたHER2陽性乳がん患者での併合解析と日本人集団におけるサブセット解析を行った結果、奏効率(ORR)は全体で58.3%、日本人集団で64.7%と日本人で高い一方、血液毒性の頻度が日本人で高い傾向であったことが示された。島根大学医学部附属病院 先端がん治療センターの田村 研治氏が第28回日本乳癌学会学術総会で発表した。

 第I相J101試験でのORRは59.5%(95%CI:49.7~68.7)、第II相DESTINY-Breast01試験では60.9%(同:53.4~68.0)と高い値が報告されている。今回、これらの試験において、HER2陽性進行乳がん(T-DM1に抵抗性あるいは耐容不可)で承認用量(5.4 mg/kg、3週ごと)を投与された患者の併合解析を行い、さらに日本人集団におけるサブセット解析を実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・併合解析の対象患者は235例(第I相:51例、第II相:184例)、年齢中央値は56.0(範囲:28~96)歳、人種はアジア人と白人がほぼ半数ずつであった。
・前治療レジメン数の中央値は6コース(範囲:2~27)で、そのうち69.8%にペルツズマブの前治療歴があった。データカットオフ(第I相:2019年2月1日、第II相:2019年3月21日)時点で120例(51.3%)が治療継続中で、投与期間中央値は7.4ヵ月(範囲:0.7~30.4)であった。
・中央判定によるORRは、全体で58.3%(95% CI:51.7~64.7)であり、DOR中央値は16.9ヵ月(同:9.5~NE)、CRは4.3%、無増悪生存期間中央値は13.9ヵ月(同:10.9~NE)であった。
・日本人(51例)のサブセット解析では、ORRは64.7%(95% CI:50.1~77.6)、CRは5.9%であった。
・治療下で発現した有害事象(TEAE)は日本人で100%、全体で99.6%にみられた。日本人では薬剤関連の中止・中断例が多く、肺炎が4例、間質性肺疾患(ILD)が3例にみられた。
・主な有害事象を日本人と全体で比較すると、日本人で好中球減少症(全Grade:60.8%)、貧血(同:58.8%)が高い傾向がみられたが、多くはGrade2以下でマネジメント可能であった。
・ILDは、全体では9.4%(22例)に発症し、2.1%(5例)が死亡した。日本人では発症が19.6%(10例)と頻度は高かったが、Grade3以上はいなかった。

 田村氏は、「T-DXdはHER2陽性乳がんにおいて高い治療効果がある一方で、ILDなどの有害事象については重要なリスクと理解し、注意深いモニタリングと適切な治療が必要」と述べた。

(ケアネット 金沢 浩子)