10月5日(月)~16日(金)、Web開催された第63回日本糖尿病学会年次学術集会の緊急特別シンポジウム 「COVID-19~我が国の現状と糖尿病診療との関わり~」において、山﨑 真裕氏(京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学)が「COVID-19感染拡大下における糖尿病診療」と題して、外来における糖尿病患者の行動の変化、入院における糖尿病を持つCOVID-19患者の治療について講演した。
COVID-19による2型糖尿病患者のストレス、生活習慣への影響を明らかに
糖尿病患者のストレスや血糖コントロールの悪化は、これまでの台風や地震などの災害時にも報告されてきた。同様にCOVID-19蔓延も糖尿病患者のストレスの要因であり、血糖コントロールや行動への影響が報告されている。
今回、山﨑氏らは2型糖尿病患者の生活習慣の変化を調査するため、自施設にてアンケート調査を実施。対象者は2020年4月16日~5月1日に来院予定であった564例で、電話診療を行った患者や来院しなかった患者などを除外し、最終的に203例(平均年齢67.4歳[男性:126例、女性:77例]、平均糖尿病歴は14.4年、経口薬の使用は170例、インスリンの使用は135例、運動習慣ありは133例)へ聞き取りを行った。調査項目は、ストレス、睡眠時間、運動量、食事量、間食、野菜摂取量、惣菜摂取量などで、 その変化をVASスコアで自己評価してもらった。
主な結果は以下のとおり。
・ストレスが増加した方は41.2%、運動量が減った方は53.7%だった。
・ストレスの増加と運動量の減少、食事摂取量・惣菜摂取量の増加が関連した。
・運動量の減少と間食、惣菜摂取量の増加が関連した。
・体重変化をストレスや睡眠時間などで分析したところ、運動量の減少と関連がみられた。
・HbA1cの変化については睡眠時間の減少と間食の増加が関連し悪化していた。
これらの結果について同氏は「コロナ禍の下で外出回数の減少、外出への不安があり、自宅にいる時間が長くなった結果」とし、またサブ解析では「65歳未満と運動習慣のない患者において、運動量の減少での体重増加、間食や惣菜の増加で体重やHbA1cが増加した」と結論付けたが、「病院に来られなかった患者はもっと不安を感じていたのではないか。“全体として悪くなっている”という評価ではなく、悪くなっている人と良くなっている人がいることを踏まえ、個々の対応が必要。そして、コロナ禍後にどのようにつなげていくかが課題である」とコメントした。
コロナ禍の入院患者の血糖コントロール、real-time CGMが有用
COVID-19の糖尿病合併例では、その他感染症と同様、厳密な血糖コントロール、低血糖リスクの回避が求められる。そのため血糖測定の頻度は通常より多くなり、それが医療者側の不安につながる。そこで同氏は改善策として遠隔で血糖値が確認できるよう自施設でreal-time CGMを導入した。その結果、持続インスリン静脈内投与をこまめに調節することで重症患者の血糖値を安定化させ、低血糖を起こさないようにコントロールすることができた。海外文献
*でも「血糖値を140~180mg/dlに保ちやすい、低血糖を予防できる、限られたpersonal protective equipment(PPE)の節約、Health care workerの接触の機会を減らす」可能性が示されており、糖尿病専門医としての責務を果たすため、今後もコロナ禍が続き入院患者増を予測される中で対応の検討が必要と話した。
(ケアネット 土井 舞子)