双極性障害(BD)の重要な特徴の1つとして、非精神医学的合併症や自殺による過剰な死亡リスクとの関連が挙げられる。米国・ハーバード大学医学大学院のLeonardo Tondo氏らは、BDにおける自殺の状況をレビューし、自殺リスクを予防できる可能性を検討した。Bipolar Disorders誌オンライン版2020年10月9日号の報告。
BDにおける自殺に関連する最近の研究報告についてセミシステマティックレビューを実施した。
主な結果は以下のとおり。
・BDの自殺リスクは、ほかの多くの精神疾患よりも高くなる。
・成人、青年の一般集団およびBD患者の自殺率は、それぞれ以下のとおりであった。
●成人一般集団:約11/10万人年
●青年一般集団:約4/10万人年
●成人BD患者:200/10万人年以上
●青年BD患者:100/10万人年
・BD患者の自殺企図の割合は、一般集団と比較し、成人で20倍以上、青年で50倍以上であった。
・BD患者の自殺の主なリスク因子は以下のとおりであった。
●自殺行為歴
●うつ病
●興奮と不安の混合状態
●急速な気分変化
●衝動性
●薬物乱用の併発
・BDの自殺予防に対する治療法は、不十分であった。
・いくつかの有用な治療法が発見されているが、リチウム治療を支持するエビデンスは、ほかの治療法よりも有望であった。
著者らは「BD患者のケアを行ううえで、自殺は重要な臨床的課題である。BD患者の自殺リスクと保護因子を理解し、適切なフォローアップを行うことで、自殺リスクの抑制につながると考えられる。とくに、BD患者の自殺予防を目的とし、適切に設計された科学的エビデンスの必要性が示唆された」としている。
(鷹野 敦夫)