厚生労働省の「医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業」については、補助の対象となる経費が感染防止対策に関係するものに限定されるのではないかとの疑義があった。しかし感染防止対策の取り組みを行う医療機関であれば、同省が公表している例示に加え、日常診療業務に必要な幅広い費用が対象となりうることが、明確となった。11月25日の日本医師会定例記者会見で発表された。
消耗品のほか、光熱費や保険料なども補助対象となりうる
「医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業」
1)は、新型コロナウイルス感染症の院内等での感染拡大を防ぐための取り組み(下記に例示)を行う医療機関(病院、診療所、薬局、訪問看護ステーション、助産所)を対象として、感染拡大防止対策や診療体制確保などに要する費用を補助する。
感染拡大を防ぐための取り組みの例(例示であり、これに限られるものではない)
・共通して触れる部分の定期的・頻回な清拭・消毒などの環境整備
・予約診療の拡大、整理券の配布等を行い、患者に適切な受診の仕方を周知
・ 発熱等の症状を有する新型コロナ疑いの患者とその他の患者が混在しないよう、動線の確保やレイアウト変更、診療順の工夫など
・ 電話等情報通信機器を用いた診療体制等の確保
・ 感染防止のための個人防護具等の確保
・ 医療従事者の感染拡大防止対策(研修、健康管理等)
しかしこれまで、その対象となる経費が感染防止対策に関係するものに限定されるのではないかとの疑義があった。今回、日本医師会では同省への働きかけを行い、公表されている例示に加え、以下のような経費も対象となりうることが明確となった
2)。
同事業の補助対象となりうる経費の例:
需用費
・日常業務に要する消耗品費(固定資産に計上しないもの)
・日常診療に要する材料費(衛生材料、消毒費など)
※直接診療報酬等を請求できるものは除外
・喚気のための軽微な改修(修繕費)
・水道光熱費、燃料費
役務費
・電話料、インターネット接続等の通信費
・医療施設・設備に係る火災保険、地震保険、不動産保険の保険料
・休業補償保険の保険料
・受付事務や清掃の人材派遣料で従前からの契約に係るもの
委託料
・受付事務や清掃の外部委託費で従前からの契約に係るもの
使用料および賃借料
・既存の診療スペースに係る家賃
・既存の医療機器・事務機器のリース料
日常診療業務に必要な幅広い費用が対象となることから、感染防止対策を行うほとんどすべての保険医療機関で、上限額(無床診療所100万円、有床診療所200万円、病院200万円+5万円×病床数)の補助を受けられるものと考えられるという。登壇した松本 吉郎常任理事は、「真水に近い形で医療現場の支援とすることができると明確になった」とし、改めて同事業の有効活用を呼び掛けた。
日医独自の休業補償制度を緊急創設、掛け金には支援事業を活用可能
医療従事者が新型コロナウイルスに感染した場合の休業補償については、国による補償制度
3)が11月9日よりすでに募集を開始している。今回、この制度に加え、日本医師会として独自の補償制度
4)が創設され、今村 聡副会長がその概要を解説した。掛け金は上述の厚労省補助金の対象となり、実質負担なしで加入することも可能となる。
<新型コロナウイルス感染症対応『日本医師会休業補償制度』>
支払い要件(3要件すべて満たす必要あり):
1)日本医師会会員が開設または管理する医療機関に勤務する医療従事者が、新型コロナウイルスに感染もしくは濃厚接触すること
2)医療従事者の新型コロナウイルス感染に伴い、当該医療機関で外部業者による消毒が行われること(消毒料金の多寡は不問)
3)医療従事者の新型コロナウイルスの感染および消毒の実施に伴い、休診日を含む連続7日(7営業日ではない)以上閉院もしくは外来を全面閉鎖すること
補償金:
・100万円(保険期間中に1回のみ)
掛け金(1年間):
・1施設あたり48,000円
加入方法:
・日本医師会が開設する申込専用WEBページにアクセスして申込手続を実施
※申込専用WEBページは12月早々に開設予定
・その後、掛金を日本医師会が指定する口座に振込
※請求書および加入者証は、申込手続き後に登録メールアドレスへ送信される
・加入申込みは12月より募集を開始し、1月1日保険始期とする。毎月1日付で中途加入可能(中途加入掛金は月割計算)
(ケアネット 遊佐 なつみ)