「肺癌診療ガイドライン」改訂、会員アンケートから見えた改善点は?/日本肺癌学会 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2020/12/14 2020年11月、「肺癌診療ガイドライン」改訂版が公開された。肺癌診療は新規薬剤が次々と承認され、ガイドラインが毎年改訂されるという特異な状況にある。11月に行われた第61回日本肺癌学会学術集会では「肺癌診療ガイドライン(薬物):過去10年の軌跡とこれからの未来」と題し、ガイドライン作成・改訂のこれまでを振り返り、今後について議論するシンポジウムが行われた。 この中で国立がん研究センター東病院呼吸器内科の野崎 要氏は「ガイドラインは誰のものか?:アンケート結果報告」と題し、日本肺癌学会正会員(医師)の薬物療法従事者を対象に行ったアンケート結果を発表した。このアンケートは肺癌診療ガイドラインの使用実態を調査し、以後の改訂に活かすことを目的に、2020年6~10月にWeb上で行われたもの。有効回答数は540だった。 「現在の肺癌診療ガイドラインに満足していますか?」(単一回答)との設問では、「満足している」(28%)、「どちらかといえば満足している」(65%)との回答が計93%となり、概ね満足している現状が確認された。さらに、「肺癌診療ガイドラインを日々の診療において参考にしていますか?」との設問にも「参考にしている」(76%)、「どちらかといえば参考にしている」(21%)で計97%と、多くが参考にしていると答えた。 演題のテーマにも掲げられた「肺癌診療ガイドラインの最も適切な読者対象は?」(単一回答)との設問には「肺癌診療専門医」が58.5%だった一方で、「肺癌診療非専門医」との回答も29.4%あり、「その他」として「肺癌診療に携わるすべての医師・医療者」といった回答も寄せられた。野崎氏は「専門医のニーズを満たしつつ、非専門医も使えるガイドラインを提供する、というこれまでの方針の妥当性を確認できた」とした。 続けて、「現在の肺癌診療ガイドラインの長所」(複数回答可)として挙げられた点としては、「樹形図により選択肢が明確である」(64.1%)、「各項の内容が詳しく記述されている」(55.4%)、「推奨の記載が明確である」(54.5%)等、各改訂時に委員が工夫、改善してきた点が評価された。一方で「短所」としては、「同じCQで推奨される治療法が複数ある」(24.1%)が最多となり、その最たる例として「EGFR遺伝子陽性NSCLC患者の1次治療」として7種ものレジメンが挙げられている状況を紹介した。「委員会内でもこの点は常に議論になっている。現場であまり使われなくなった薬剤は削るべきとの議論もあったが、現在のエビデンスでは時期尚早と判断した」(野崎氏)と説明した。 自由記載欄には「保険適応のない薬剤が推奨されており、しかも解説がない」「発刊時には既に新しい治療が期待されていることが多いので、その注意書きが欲しい」といった治療の進歩が速い肺癌診療ならではの意見も寄せられた。 「推奨度の決定に置いて、重要な要素は下記のどれだと考えますか?」という設問において優先順位順に回答を募ったところ、1番は「全生存期間(OS)」75.4%、2番は「無増悪生存期間(PFS)」が51.1%と過半以上を占めたが、3番以降は「費用対効果」「QOL」「毒性(有害事象)」と回答が分かれたという点も紹介した。 遺伝子パネル検査や新規薬剤の登場で高額化が著しいがん診療において、現在ガイドラインでは触れられていない「費用対効果(コスト)」の視点を盛り込むべきなのか、盛り込むとしたら誰の視点から評価すべきなのか、という点は、シンポジウム全体を通じた大きな論点となっていた。 第61回日本肺癌学会学術集会は21日(月)までオンデマンド配信が行われている(http://conference.haigan.gr.jp/61/ondemand/ 要参加登録)。 (ケアネット 杉崎 真名) 参考文献・参考サイトはこちら 肺癌診療ガイドライン 2020年版 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) 関連記事 非小細胞肺がん1次治療、3種の二ボルマブ関連併用療法が国内承認/小野・BMS 医療一般(2020/12/03) nabパクリタキセルは既治療のNSCLCの標準治療となるか、ドセタキセルとの比較(J-AXEL)/日本肺癌学会 医療一般(2020/11/26) ニボルマブ+イピリムマブ+2週間化学療法の肺がん1次治療、アジア人の成績は?(CheckMate9LA)/日本肺癌学会 医療一般(2020/11/20) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 世界の死産率と新生児死亡率の傾向/Lancet(2024/11/19) 「サンドイッチ療法」を肺がん周術期治療の主軸に考えよ(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)(2024/11/19) 慢性期統合失調症患者の低握力が認知機能や精神症状と関連(2024/11/19) 日本の新型コロナワクチン接種意向、アジア5地域で最低/モデルナ(2024/11/19) アナフィラキシーの認識と対応にはいまだ課題も(2024/11/19) 「電気絆創膏」で皮膚感染を予防する可能性(2024/11/19) 中年初期の質の低い睡眠は中年後期の脳の老化と関連(2024/11/19) CAVI高値のCAD患者は発がんリスクが高い(2024/11/19) [ あわせて読みたい ] トレンド・トーク『肺がん』(2024/06/11) 災害対策まとめページ(2024/02/05) Dr.大塚の人生相談(2024/02/26) IBD(炎症性腸疾患)特集(2023/09/01) 旬をグルメしながらCVIT誌のインパクトファクター獲得を祝福する【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第63回(2023/08/29) エキスパートが教える痛み診療のコツ(2018/10/11) 医療者向け『学校がん教育.com』(2022/12/01) アトピー性皮膚炎・乾癬特集まとめインデックス(2022/11/11) アトピー性皮膚炎・乾癬特集まとめインデックス(2022/11/11) 診療所売買に関心がある方に!マンガ連載をまとめた冊子プレゼント【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第43回(2022/10/17)