メトホルミンはCOVID-19の発症・死亡に影響するのか?

提供元:ケアネット

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公開日:2021/02/26

 

 糖尿病は、COVID-19による死亡の重要なリスク因子として考えられており、これまでのさまざまな研究で、糖尿病治療薬メトホルミンが複数のメカニズムを介してCOVID-19に影響を与えることが示唆されている。今回、英・バーミンガム大学のJingya Wang氏らが、2型糖尿病患者におけるCOVID-19へのメトホルミンの影響を調査した。その結果、メトホルミンの処方は、COVID-19発症または死亡のリスクとは関連していなかった。Journalof Clinical Endocrinology and Metabolism誌オンライン版2021年2月9日号での報告。

 研究グループは、英国の大規模なプライマリケアデータThe Health Improvement Network(THIN)を使用し、成人の2型糖尿病患者を対象とした人口ベースの後ろ向きコホート研究を実施。解析データにはインデックスの1年前までに2型糖尿病の一般診療を受けている患者が含まれ、2020年1月30日~10月13日まで追跡された。12歳以前に糖尿病と診断された人、1型糖尿病、血糖降下薬に対する副作用の既往歴、膵炎、推定糸球体濾過率(eGFR)測定値が30mL/min/1.73m2未満、前年に妊娠した人は除外された。

 メトホルミンおよびその他の血糖降下薬8種のうち、少なくとも1種類の処方がある患者(MF+)と、メトホルミンを含まない血糖降下薬の処方がある患者(MF-)を比較。アウトカムとして、疑い例を含むCOVID-19、RT-PCR検査で確定診断されたCOVID-19、およびそれに関連する死亡率を調査した(COVID-19に関連する死亡は、診断後28日以内の死亡として定義)。ネガティブコントロールとして、腰痛の結果分析も実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・解析データには、2万9,558例のメトホルミン群(MF+)および1万271例の対照群(MF-)が含まれ、そこから社会人口統計学的要因(年齢と性別、肥満度指数およびその他の代謝プロファイル測定値、血圧、心血管およびその他の併存疾患)を含む交絡因子の傾向マッチングにより、各群から1万183例を抽出した。

・マッチング後、疑い例を含むCOVID-19と確認されたのは、メトホルミン群で172例(うち確定は47例)、対照群で186例(同54例)だった。対照群と比較したメトホルミン群におけるCOVID-19発症の調整ハザード比(HR)は、疑い例を含むCOVID-19で0.85(95%CI:0.67~1.08)、確定診断されたCOVID-19で0.80(95%CI:0.49〜1.30)であり、いずれも統計的有意性は得られなかった。

・メトホルミン群で死亡した214例のうち17例、および対照群で死亡した266例のうち20例が、COVID-19に関連していた。すべての原因による死亡の調整HRは0.89(95%CI:0.74〜1.07)で、COVID-19関連死亡の調整HRは0.87(95%CI:0.34〜2.20)であり、グループ間に有意差は見られなかった。

・ネガティブコントロール分析は、見落とされた交絡を示唆しなかった。

 著者らは、「メトホルミンの処方は、COVID-19の発症率または死亡率のリスク上昇とは関連しなかった。COVID-19への懸念にかかわらず、糖尿病患者の血糖コントロールを改善するためにメトホルミンを処方し続けることは安全だ」とコメントしている。

(ケアネット 堀間 莉穂)