日本医師会・今村 聡副会長が、感染症法にかかる検査キットの販売について、25日の記者会見で言及した。政府が1日20万件程度まで拡充すると昨年8月に表明した国内のPCR検査体制については、厚労省のデータによると2月4日時点で約15万件まで拡充されている。一方、民間事業者による検査能力は1日7万件に上るとの報告がある。
今村氏は、「(民間事業者による検査が)公的検査の補完につながるという意見もあるが、それを達成するためには検査精度が維持され、十分な感染症予防策などの対応が重要だ」と慎重な姿勢を示した。
民間事業者による検査も感染症法の協力要請対象となる
今村氏は、「感染症法第十六条の二(協力の要請等)によると、医療機関だけでなく民間事業者やその他感染症試験研究等機関に対しても、措置の実施に対する必要な協力を求めることができる」と説明し、「民間事業者には検査の意義を十分に認識した上で対応をお願いしたい」と述べた。
また、薬事承認されていない研究用の検査キットがインターネットやドラッグストアなどで販売されている事例を指摘し、「これらの検査キットが感染症法による規制の対象外になっていることは非常に大きな問題。(患者が)医療用の検査を受ける機会を逃すことで、適切な医療機関の受診や医師による届け出につながらない恐れもある」と強い懸念を表した。
同氏は、日本医師会による見解を示し、以下の4点を求めた。
1.医療に供する、薬事承認された体外診断薬を販売するものに対しては、医療機関以外へ販売しないよう、厚生労働省による指導を徹底すべき
2.感染症法の適用範囲については、薬事承認の有無を問わず、感染症に関連した検査用製品の販売まで適用対象を拡大すべき
3.こうした法的な対応が取られるまでの間は、感染症法第16条の2の理念を踏まえ、感染症に係る研究資材を製造販売している企業は、販売先及び販売数を厚労省に対して報告を行う
4.こうした製品を現に使用している者は、症状の有無、使用した結果にかかわらず医療機関に相談する
最後に、同氏は「感染症は一国ではなく世界全体の問題。すべての人々が適切な検査を受けて、検査から医療につながる仕組みの体制構築が必要である。日本医師会としても引き続き尽力し、多くの関係機関の協力をあおぐ」とまとめた。
(ケアネット 堀間 莉穂)