2019年6月に保険適用となったがんゲノムプロファイリング(comprehensive genomic profiling test、CGP)検査。その実施は、がんゲノム医療中核拠点病院、拠点病院、連携病院に限定され、検査結果は中核拠点病院、拠点病院で実施される専門家会議「エキスパートパネル」での検討が必須とされている。
ここでの方針がCGP検査を受けた患者の治療に直結するが、各エキスパートパネルの現状や判断の差異については評価されていなかった。そこで、中核拠点病院11施設での2019年6月~2020年1月における、エキスパートパネルの実績(全検討症例数および、遺伝子異常に合った投薬や遺伝相談外来の受診に結び付いた症例数)を調査するとともに、模擬症例2例を用いて各エキスパートパネル間で推奨治療に差があるかどうかを検証する研究を行った。第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO Virtual2021)では、この研究結果を国立がん研究センター中央病院の角南 久仁子氏が発表した。
主な結果は以下のとおり。
・上記期間において計747例(範囲:5~172例/施設)が中核拠点病院のエキスパートパネルで検討された。
・遺伝子異常に合った投薬は28例(3.7%)で行われた。投薬の内訳でもっとも多いのは治験で28例中16例であった。
・遺伝相談外来受診は18例(2.4%)であった。
・模擬症例2例の検討では治験を中心に推奨治療に施設間差を認めた。
今回の研究結果を受け、下記2点を実施し、さらなる研究を継続するとしている。
1)中核拠点病院12施設について2020年2月~2021年1月におけるエキスパートパネルの実績調査
2)エキスパートパネルの標準化のため、各がん種で代表的な遺伝子異常を有する模擬症例50例を提示し、中核拠点病院代表者のエキスパートパネルを実施。推奨治療の差異を評価するとともにセミナーなどを開催
また、推奨治療の違いが各エキスパートパネルの治験情報へのアクセスの違いが影響しているとの見解を示し、今後の治験情報の共有化の重要性を訴えた。
(ケアネット 細田 雅之)