遺伝子パネル検査、がん種別に見た遺伝子異常の特徴は?/日本臨床腫瘍学会

提供元:ケアネット

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公開日:2021/03/08

 

 国立がんセンターが中心となって展開する産学連携全国がんゲノムスクリーニング事業、SCRUM-Japan。2019年7月に開始した第三期プロジェクトでは、それまで消化器がんを対象としていたGI-SCREEN-Japanプロジェクトが泌尿器がん、乳がん等にも対象を拡大し、新たに血液を用いた遺伝子解析検査(リキッドバイオプシー)も取り入れた、MONSTAR-SCREENとして再始動している。参加するのは全国31施設、参加者は消化器がん、皮膚がん、乳がん、産婦人科がん、頭頸部がん、泌尿器がんなどの切除不能な固形がん患者で、腫瘍組織によるゲノム解析を受けたうえで、リキッドバイオプシー検査と腸内細菌叢(マイクロバイオーム)の検査、解析を受ける。

 2月に行われた第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO Virtual2021)Presidential Session3では、MONSTAR-SCREENの消化器・泌尿器の各サブグループが、がん種別の遺伝子変異の特徴をはじめとした、中間解析の結果を発表した。

 はじめに、舛石 俊樹氏(愛知県がんセンター)が、MONSTAR SCREENの消化器がんサブグループの中間解析結果を発表した。

【消化器がんサブグループ中間解析】

・血中循環腫瘍DNA(ctDNA)が検出された470例のうち、消化器がんは133例、非消化器がんは337例だった。
・消化器がんは非消化器がんに比べ、ctDNAレベル中央値が有意に高値であった(11.8 vs0.6%)。消化器がんの中では、大腸がんのctDNAレベルが最も高値であった。
・消化器がんは非消化器がんに比べ、発がんや腫瘍増殖に関連するシグナル伝達経路の中で、p53、RTK、MAPK、Wnt経路における遺伝子異常が有意に高頻度であり、とくに多く見られた遺伝子異常はAPCTP53変異だった。
・腫瘍組織とリキッドバイオプシーにおける遺伝子異常の検出一致率は69%(81/132)であった。

 続けて、野々村 祝夫氏(大阪大学)が、泌尿器がんサブグループの中間解析結果を発表した。

【泌尿器がんサブグループ中間解析】

・ctDNAが検出された470例のうち、泌尿器がんは70例、非泌尿器がんは400例だった。
・泌尿器がんは非泌尿器がんと比べ、ctDNAレベルに有意差を認めなかったものの、腎細胞がんは全がん種において2番めに低かった(中央値:0.13%)。
・腎がん、前立腺がん、尿路上皮がんにおける血中腫瘍遺伝子変異量(bTMB)中央値はそれぞれ0.44/Mb、0.88/Mb、4.39/Mbであり、尿路上皮がんは全がん種において最も高かった。
・泌尿器がんは非泌尿器がんに比べ、PI3K、MAPK、Wnt経路における遺伝子異常が有意に低頻度だった。
・腫瘍組織とリキッドバイオプシーにおける遺伝子異常の検出一致率は67%(10/15)であった。

 両氏は、中間解析の結果から得られた示唆を活かしながら引き続き症例を蓄積し、がん種別に奏効率に関わる検討などを行い、国内外に広く発信するとしている。

 JSMO Virtual2021は3月1~31日までオンデマンド配信が行われる(要参加登録)。
第18回日本臨床腫瘍学会学術集会

(ケアネット 杉崎 真名)