高齢者サルコペニアは死亡・要介護リスク増加、予備群は?/東京都健康長寿医療センター

提供元:ケアネット

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公開日:2021/03/09

 

 健康のバロメーターとして「筋肉」が注目される中で、高齢者におけるサルコペニアの予防・改善は、健康長寿を実現するためにも重要である。東京都健康長寿医療センター研究所・北村 明彦氏らの研究グループは、日本人の一般高齢者1,851人におけるサルコペニアの有病率、関連因子、死亡・要介護化リスクについて約6年間の追跡調査を行い、その結果をプレスリリースで発表した。75~79歳では男女ともに約2割、80歳以上では男性の約3割と女性の約半数がサルコペニアに該当し、サルコペニアになると死亡、要介護化のリスクがいずれも約2倍高まることが示された。Journal of Cachexia, Sarcopenia Muscle誌2021年2月号に掲載。

 研究グループは、群馬県と埼玉県において、健康診査を受けた65歳以上の日本人計1,851人(女性50.5%、平均年齢72.0±5.9歳)を対象に、平均5.8年間(最大9.5年)の追跡研究を行った。サルコペニア診断基準(AWGS 2019)に基づき定義されたサルコペニアは、筋肉量の一定の減少(四肢骨格筋指数:男性7.0kg/m2未満、女性5.7kg/m2未満)に加えて、筋力・身体機能の一定の低下(握力低値:男性28kg未満、女性18kg未満、または歩行速度の低値:男女ともに毎秒1m未満)が認められた場合に「有り」と判定された。

 主な結果は以下のとおり。

・サルコペニアの有病率は、男性で11.5%(105/917例)、女性で16.7%(156/934例)だった。有病率は年齢とともに上昇し、75~79歳では男女ともに約22%、80歳以上では男性の32%、女性の48%がサルコペニアに該当していた。

・サルコペニアの人はそうでない人に比べて、男性では「身体活動が少ない」「血液中のアルブミン濃度が低い」「喫煙者が多い」「最近1年以内の入院が多い」(いずれもp<0.05)、女性では「うつ症状が多い」(p<0.001)、「認知機能の低下が多い」(p=0.004)ことがわかった。

・サルコペニアの人は、筋肉量、筋力ともに低下していない人に比べて、男女共に総死亡リスクが高かった(男性:ハザード比[HR]=2.0、95%CI:1.2~3.5/女性:HR=2.3、95%CI:1.1~4.9)。また、要介護発生リスクも高くなる可能性が明らかになった(男性:HR=1.6、95%CI:1.0~2.7/女性:HR=1.7、95%CI:1.1~2.7)。

・サルコペニア予備群(筋肉量は少なくても筋力・身体機能が一定維持されている人、および筋力・身体機能が弱くても筋肉量が一定維持されている人)には、男性で29.7%(272/917例)、女性で31.6%(295/934例)が該当したが、総死亡リスク、要介護発生リスクは共に高くならなかった。

 研究者らは、「サルコペニアの高齢者は、死亡および要介護発生のリスクが高く、いわゆる自立喪失の危険性が高いことが明らかとなった。したがって、サルコペニアを早期発見し、その進行を食い止めることは健康寿命の延伸に貢献すると考えられる」と結論している。

(ケアネット 堀間 莉穂)