うつ病は一般的なメンタルヘルス障害であり、その症状により機能的な問題が生じ、日常活動を減少させる可能性のある疾患である。このような問題を抱える患者に対し作業療法は、日常的に提供されている治療法である。英国・サルフォード大学のLynn Christie氏らは、うつ病に対する作業療法介入の有用性を裏付けるエビデンスをシステマティックに評価するため、検討を行った。Journal of Affective Disorders誌2021年3月1日号の報告。
うつ病と診断された患者に対する作業療法の有効性を評価するため、システマティックレビューとメタアナリシスのための優先報告項目(PRISMA)を用いて、システマティックレビューを行った。作業療法に関連する用語とうつ病をキーワードとし、7つのデータベースより検索を行った。研究デザインとアウトカム測定方法の不均一性のため、メタ解析の代替としてベストエビデンスの統合を行った。
主な結果は以下のとおり。
・抽出された1,962件中63件の研究を全文評価し、6件が選択基準を満たした。
・研究実施国は、カナダ、ドイツ、オランダ、台湾、英国であった。
・うつ病患者に対する作業療法のエビデンスとして、以下の有用性が認められた。
●うつ症状を改善するための作業療法による職場復帰介入(強力なエビデンス)
●不安や自殺念慮を軽減するための作業療法によるライフスタイル介入(限られたエビデンス)
●仕事への復帰を改善(限られたエビデンス)
・個々の患者を対象として作業療法を評価した研究はなく、研究のギャップが浮き彫りとなった。
・本研究の限界として、研究内の不完全な報告および不均一性によりメタ解析が行えなかった点と英語による制限が挙げられる。
著者らは「うつ病に対する作業療法のエビデンスは限られているものの、作業療法が職場復帰の介入として有効であることを示す強力なエビデンスが見つかった。このことは、メンタルヘルスと休職コストとの関連を考慮すると非常に重要なポイントである。今後は、さらなる研究により、エビデンスを増やしていくことが望まれる」としている。
(鷹野 敦夫)