海外では現行のマスクを利用すると聴覚障がい者などのコミュニケーションの妨げになるとして、透明なマスクの開発が進められている。では実際、この懸念は透明なマスクによって本当に払拭されるのだろうか―。ノースカロライナ大学チャペルヒル校のIan M Kratzke氏らが200例を対象としてランダム化比較試験を実施した結果、患者は主治医の顔を見ながらコミュニケーションをとることを好むと示唆された。また、外科医が透明なマスクを着用することは、患者にとって良いコミュニケーターとなり、患者からより共感が得られ、より大きな信頼を引き出すことが明らかになった。JAMA Surgery誌オンライン版2021年3月11日号掲載の報告。
研究者らは、外科医が透明なマスクと標準的なマスクを着用した場合における患者とのコミュニケーション状況の違いを評価することを目的に、単一医療施設の外来診療にてランダム化比較試験を実施。分析にはCochran-Mantel-Haenszel検定を使用した。
主な分析内容は、「外科医のコミュニケーション」「外科医への信頼度」「外科医のマスク着用による患者の印象の定量的評価」「患者の認識の定性的評価」とし、クリニックでの受診後、患者に口頭調査を行った。
主な結果は以下のとおり。
・7つの専門分野にまたがり、外科医15名が研究に登録された。
・2020年9月3日~11月12日の期間、患者200例が登録された。
・外科医が透明なマスクを着用した場合、患者は理解しやすい説明を提供してくれたと、外科医を高く評価し(透明なマスク群:95/100[95%]vs.標準的なマスク群:78/100[78%]、p<0.001)、共感が得られ(同:99% vs.同:85%、p<0.001)、信頼構築できた(同:94% vs.同:72%、p<0.001)。
・患者は外科医の顔が視覚化されることでコミュニケーションがとりやすく感謝を伝えやすくなることから、透明なマスクを好んだ(同:100% vs.同:72%、p<0.001)。
・一方で、外科医8人(53%)は、透明なマスクではなく標準的なマスクを選択した。
研究者らは、「マスクはしばらくヘルスケアにおける風景の一部であり続けるので、外科医と患者でコミュニケーションを維持する際には慎重な注意が必要」としている。
(ケアネット 土井 舞子)