転移を有する乳がん患者において、がん感受性遺伝子の生殖細胞系列変異の頻度や、これらの変異の臨床的関連性は不明である。今回、ドイツ・University Hospital ErlangenのPeter A. Fasching氏らは、転移を有する乳がん患者の前向きコホートで、BRCA1とBRCA2を含む乳がん素因遺伝子変異の頻度と変異患者の臨床的特徴を調べ、変異が転帰に及ぼす影響を検討した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2021年3月29日号に掲載。
本研究の対象は、PRAEGNANTレジストリに登録された転移を有する乳がん患者2,595例。生殖細胞系列DNAのがん素因遺伝子変異を評価し、乳がん素因遺伝子変異の頻度を転移のない乳がん患者の前向きレジストリの結果と比較した。変異の状況について腫瘍の特徴、無増悪生存期間、全生存期間との関連を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・12の乳がん素因遺伝子の生殖細胞系列変異が271例(10.4%)に認められ、BRCA1もしくはBRCA2の変異が129例(5.0%)に認められた。
・脳転移の割合は、BRCA1変異キャリア(27.1%)のほうが非キャリア(12.8%)より高かった。
・本レジストリの患者(転移のある乳がん患者)は、転移のない乳がん患者に比べて変異の割合が有意に高かった(10.4% vs.6.6%、p<0.01)。
・転移のある乳がん患者の無増悪生存期間や全生存期間に、変異による有意な変化はなかった。
著者らは、「転移のある乳がん患者において、変異キャリアと非キャリアの予後は類似していたが、腫瘍の特徴でみられた違いは治療および今後の分子標的療法の研究に影響する」としている。
(ケアネット 金沢 浩子)